iDeCo(イデコ)とは、2001年に開始した個人型確定拠出年金の愛称です。職業に応じて加入資格や掛金の上限額が設けられており、また確定申告や年末調整など、節税の手続きも異なります。iDeCoを始める前に、加入資格や運用方法、商品の違いなどを確認しておきましょう。
iDeCo(イデコ)を始める前に
iDeCoでは、職業ごとに加入資格や掛金の上限額が設けられています。誤って掛金を支払ってしまうと還付措置が取られ、手数料を徴収されてしまいます。こういった加入後のトラブルを避けるためにも、加入前に加入資格や上限額などを確認しましょう。
iDeCo(イデコ)とは
iDeCoとは、個人が金融機関の選定から運用まで行う私的年金です。2001年に開始した当初は、自営業者や企業年金のない会社員のみ加入できました。しかし、2017年の加入者拡大により、企業年金のある会社員、公務員、専業主婦(夫)の方も加入できるようになりました。
3つの税制メリット
iDeCoに加入すると、以下の3つの税制メリットを受けることができます。
- 掛金が全額所得控除
- 運用益が非課税
- 受け取り時に税制優遇
1.掛金が全額所得控除
iDeCoに拠出した掛金は、全額が所得控除の対象となります。所得控除とは、所得税がかけられる所得を減額する仕組みであり、控除額が大きいほど支払う税金を安くすることができます。iDeCoの場合、拠出した分だけ所得控除として所得を差し引くことができます。つまり、拠出が多ければ多いほど、その分税金も安くすることが可能です。
2.運用益が非課税
iDeCoの投資信託の利益や定期預金の利息には、税金が課せられません。通常、投資信託などの運用益には、利益に対して20.315%の税金が徴収されます。しかし、iDeCoの投資信託で発生した利益は非課税対象であり、定期預金も同じく非課税です。利益を多く出せば、その分運用や年金に回すことができます。
3.受け取り時に税制優遇
iDeCoの資産を受け取る際に、税金を安く抑えることができます。iDeCoの資産は、一括もしくは分割で受け取りますが、一括の場合は退職所得控除が、分割の場合は公的年金等控除が適用されます。どちらの受け取り方法でも、控除を受けられるため税金対策となります。
また、一括と分割を組み合わせた受け取り方法もあり、その場合は退職所得控除と公的年金等控除の両者を利用できます。
デメリット
iDeCoは節税ができる一方で、手数料が発生するというデメリットがあります。手数料は加入時、運用時、受け取り時に発生し、特に運用期間中は毎月手数料が徴収されます。運用益が手数料を下回るとマイナス利益になるため、手数料には注意しましょう。
さらに、iDeCoの受け取り開始は60歳以降です。一度拠出した掛金は、60歳になるまで引き出すことができないため、万が一の資金として利用することができません。iDeCoに拠出する場合は、家計の無理のない範囲内で拠出しましょう。
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加入資格
iDeCoでは、職業ごとに加入資格を設けています。特に会社員の場合は、加入している企業年金の有無によって加入資格や上限額が異なるため注意しましょう。
iDeCo(イデコ)の加入資格・条件は年齢や職業で異なります。手続き前に確認を
自営業者
加入資格 | 上限額 | 最低額 |
・20歳以上60歳未満 ・農業者年金基金の未加入者 |
68,000円 | 5,000円 |
会社員
加入資格 | 上限額 | 最低額 |
企業年金あり | 12,000円 | 5,000円 |
企業年金なし | 23,000円 | 5,000円 |
企業型DCのみあり | 20,000円 | 5,000円 |
公務員
加入資格 | 上限額 | 最低額 |
・60歳未満 | 12,000円 | 5,000円 |
専業主婦(夫)
加入資格 | 上限額 | 最低額 |
・20歳以上60歳未満 | 23,000円 | 5,000円 |
iDeCo(イデコ)のやり方
iDeCoは個人で加入手続きから商品の選定、資産の運用まで行います。加入手続きを行う前に、まずはiDeCoの運用を行う運営管理機関を決めましょう。
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運営管理機関を決める
運営管理機関は1つしか利用できず、それぞれ手数料やサービス内容が異なります。以下の3つのポイントをもとに、ご自身にあった運営管理機関を選びましょう。
- 手数料が安いか
- サポートが充実しているか
- 商品ラインナップが揃っているか
1.手数料が安いか
iDeCoの運用期間中、収納手数料、事務委託手数料、口座管理手数料が毎月発生します。このうち、口座管理手数料は運営管理機関によって金額が異なります。手数料が高いと運用益を上回ってしまう可能性があるため、口座管理手数料の安い運営管理機関がおすすめです。
2.サポートが充実しているか
運営管理機関ごとにサービスの特徴があります。例えば、初心者向けの多いセミナーやサービスが多いイオン銀行、サポート体制が充実した楽天証券など、サービス内容は様々です。特に、資産運用が初めての方は、すぐに相談できる環境が大切のため、相談窓口やコールセンターが充実した運営管理機関がおすすめです。
3.商品ラインナップが揃っているか
運営機関選びでは、商品ラインナップも重要です。上述したように、iDeCoの運用管理機関は1つしか利用できません。商品ラインナップが少ないと、商品の選択肢も狭まり、運用成績にも大きく影響していきます。それぞれの運営管理機関がどれぐらいあるのか、そして自身が運用したい商品があるかを確認しましょう。
運用商品を選ぶ
iDeCoの運用商品は、元本確保型と元本変動型に分けられます。それぞれの商品ごとに、運用方法や特徴が異なるため、必ず確認しましょう。
元本確保型
元本確保型の特徴は、元本を割れのリスクを抑えられることです。元本確保型は、定期預金や保険などの価格変動を伴わない商品のため、コツコツと積み立てすることができます。その一方で、大きく増えないというデメリットもあります。元本変動型は大きく増えることがないため、場合によっては手数料を下回ることがあります。
元本変動型
元本変動型の特徴は、資産を大きく増やせることです。元本変動型である投資信託は、価格変動によって掛金以上に資産を増やすことができます。ただし、資産を大きく増やせる一方で、減らしてしまう可能性もあります。元本変動型に拠出する場合は、リスクを抑えた投資を心がけましょう。
資料請求をして申し込み
運営管理機関を決めたら、iDeCoの加入手続きを行いましょう。加入手続きは以下の手順で行います。
- 資料請求
- 申込書に記入
- 郵送にて提出
資料請求
iDeCoの資料請求方法は、運営管理機関ごとに異なります。インターネットもしくは電話にて資料請求をしましょう。なお、運営管理機関によっては店舗での受け取りも可能です。手続きが不安な方は、相談がしやすい店舗窓口での受け取りをおすすめします。
申し込みに必要なもの・書類
申し込みの際には、以下のものを揃えましょう。なお、引き落とし口座は運営管理機関と同一の口座でなくて構いません。
申込書
各職業ごとの申込書は以下の通りです。
職業 | 申込書 |
自営業者・専業主婦(夫) | 個人型年金加入申出書 |
会社員 | 個人型年金加入申出書 事業所登録申請書兼第2号加入者にかかる事業主の証明書 |
公務員 | 個人型年金加入申出書 第2号加入者に係る事業主の証明書(共済組員用) |
会社員・公務員は注意
申し込みの際、会社員や公務員の方は注意が必要です。会社員や公務員の方は、「個人型年金加入申出書」に加えて、各種証明書を提出します。この証明書には勤め先の印が必要であり、印がないと申し込むことができません。必ず各証明書の「事業主の署名および押印等」の欄に印をもらいましょう。なお、転職した場合にも、新しい勤め先の印を提出する必要があります。
申し込みから口座開設までの期間
申し込みをしてから、口座開設できるまで約1〜2ヶ月程度かかります。また、運営管理機関の申し込み締め切り日に間に合わなかった場合は、翌々月から反映されます。申し込み締め切り日を確認し、余裕を持って手続きをしましょう。
初期設定
運営管理機関によって、申し込みをした後にインターネット管理画面の初期設定を行う必要があります。初期設定を行わないと、掛金や運用内容が管理画面に反映されません。パスワードが郵送されたら、すぐに設定を行いましょう。
では、楽天証券とSBI証券を例に初期設定方法を見ていきます。
・楽天証券
- 申し込み後パスワードを受け取る
- 楽天証券ウェブにアクセス
- 加入者口座番号とパスワードを入力
- 掛金配分を指定
- 配分内容を確認し「申込確認」を選択
・SBI証券
- 申し込み後パスワードを受け取る
- SBIベネフィットシステムズにアクセス
- 加入者コードとパスワードを入力
- 掛金配分を指定
- 配分内容を確認し「はい」を選択
運用方法
iDeCoの加入手続きが完了したら、実際に運用を開始します。投資信託のため、常に注力をする必要はありませんが、定期的に運用内容を見直すことをおすすめします。もし、運用成績が思わしくない場合は、配分変更やスイッチングでリバランスを行います。
配分変更
配分変更とは、今後購入する運用商品の種類や割合を変更する手法です。運用を開始する前に、投資方針を定めますが、ライフスタイルの変化により拠出額など変更することがあります。その際は、配分変更をすることで、その時のライフスタイルにあった運用商品に変更することができます。
スイッチング
スイッチングとは、現在運用している商品を売却、買い増しする手法です。価格の変動により保有資産のバランスが崩れる場合があります。その際は、売却や買い増しすることでリバランスを行います。ただし、運用商品を売却する際には、手数料が発生する場合があります。
確定申告・年末調整
iDeCoは税制メリットのある年金ですが、このメリットを受けるためには、確定申告や年末調整で申告する必要があります。職業や支払い方法によって申告方法が異なるため、必ず確認するようにしましょう。
自営業者
自営業の方は、確定申告にて手続きします。確定申告の際には、「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要です。確定申告書Bの小規模企業共済等掛金控除の欄に年間の掛金額を記入し、「小規模企業共済等掛金払込証明書」と一緒に提出しましょう。
会社員・公務員
会社員や公務員の方は、年末調整もしくは確定申告で手続きします。個人払込を利用している場合、勤め先の年末調整書類に年間の掛金額を記入し、「小規模企業共済等掛金払込証明書」と一緒に提出します。もし、年末調整に間に合わなかった場合は、確定申告にて手続き可能です。確信申告の際は、確定申告書Aに記入しましょう。
なお、事業主払込を利用している方は年末調整や確定申告は不要です。
iDeCo(イデコ)におすすめの運営管理機関
iDeCoを取り扱っている運営管理機関は、160にもおよびます。こちらでは、その中でも特に利用者数が多く、評判の高い運営管理機関をご紹介します。
SBI証券
SBI証券は、10年の運営実績がある運営管理機関です。特徴は、豊富な商品ラインナップで、元本変動型は83本、元本確保型は4本取り扱っています。口座管理手数料も無料のため、運用コストを安く抑えることができます。
楽天証券
楽天証券も口座管理手数料が無料の運営管理機関です。特徴は、充実したサポート体制で、楽らくサポートではオペレーターと同じ画面を共有しながら、アドバイスや指示を受けられます。さらに、2017年より楽天銀行の口座を引き落とし口座として利用可能となりました。
イオン銀行
イオン銀行も、iDeCoを取り扱う運用管理機関の1つです。特徴は、初心者向けのサービスが充実していることです。加入者は、ロボアドバイザーによるアドバイスやポートフォリオの提案が受けられます。さらに、たわらノーロードやひふみ年金など、初心者に人気の商品も揃っています。
りそな銀行
りそな銀行では、全国の店舗にて無料のセミナーを受けることができます。セミナーは事業主向けに、iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)も開催されています。口座管理手数料は無料ですが、2年間の期間限定であり、3年目以降は3,144円(年間)の手数料が発生します。
まずはシミュレーション
iDeCoの公式サイトや運営管理機関のサイトでは、無料のシミュレーションツールを利用することができます。掛金や加入期間に応じた受け取り金額や節税額を確認できるため、加入を検討している方は一度シミュレーションしてみましょう。
iDeCo(イデコ)を始める前に、まずはシミュレーションを試しましょう
正しい知識を持って始めましょう
今回はiDeCoの始め方、やり方について解説しました。2001年より開始したiDeCoは、3つの税制メリットを受けられる私的年金です。加入者は掛金や資産額に応じて、加入時・運用時・受け取り時に税金を安く抑えることができますが、その一方で、60歳まで資産を引き出しできないことや手数料が発生してしまうデメリットもあります。iDeCoの仕組みやメリット、デメリットをきちんと把握してから加入手続きをしましょう。