日本の年金は大きく公的年金と私的年金に分かれます。公的年金は加入が義務付けられていますが、私的年金は個人で加入手続きをしなければいけません。今回は私的年金であるiDeCo(イデコ)について、手続き方法や始め方について解説します。特に会社員や公務員の方は手続きには注意が必要です。必ず手続き内容を確認してから申し込みましょう。
iDeCo(イデコ)の始め方
加入手続きを始める前に、まずはiDeCo(イデコ)について簡単にご紹介します。
iDeCo(イデコ)は個人で加入できる私的年金です。国民年金や厚生年金だけでは不安な場合に、任意で加入することができます。2001年に開始したiDeCo(イデコ)ですが、2018年8月の時点で加入者数は100万人を超え、現在も増加傾向にあります。
そんなiDeCo(イデコ)への加入は以下の手順で行いましょう。
①iDeCo(イデコ)の加入資格・条件を確認する
②月々の掛金を決める
③金融機関を選ぶ
④運用商品を選ぶ
⑤資料請求をして申し込み
iDeCo(イデコ)の加入資格・条件を確認する
iDeCo(イデコ)は20歳以上60歳未満の方が対象ですが、国民年金未納入者や海外居住者は加入できません。
また、職業によっても加入資格が異なります。こちらでは、会社員・公務員・自営業者・専業主婦(夫)ごとの加入資格について解説します。
iDeCo(イデコ)の加入資格・条件は年齢や職業で異なります。手続き前に確認を
会社員の場合
会社員の場合、加入している年金によって条件が変わります。特に企業型確定拠出年金の有無を確認してください。企業が実施し加入している場合、以下の方はiDeCo(イデコ)に加入できません。
①企業型確定拠出年金でマッチング拠出制度あり
②企業型確定拠出年金で規約にiDeCo(イデコ)加入が禁止されている
なお、企業型確定拠出年金に加入している方でも、以上の条件に当てはまらない方は加入できます。
公務員の場合
公務員の方もiDeCo(イデコ)に加入できます。加入対象者は60歳未満です。なお、拠出限度額は月々12,000円となっています。
自営業の場合
自営業の方もiDeCo(イデコ)に加入できます。加入対象者は20歳以上60歳未満で、農業者年金基金に加入していない方です。なお、拠出限度額は月々68,000円となっています。
専業主婦(夫)の場合
専業主婦(夫)やパートの方もiDeCo(イデコ)に加入できます。加入対象者は20歳以上60歳未満です。なお、拠出限度額は月々23,000円となっています。
月々の掛金を決める
自身の加入資格を確認したら、次は掛金を決めましょう。なお、掛金についても職業によって上限額が設けられています。最初に上限額から確認しましょう。
iDeCo(イデコ)の掛金の平均額・上限額は?年払いに変更することもできる?
職業によって掛金の上限が異なる
職業別の掛金上限額は以下の通りです。
職業 | 上限額 | 最低額 |
自営業 | 68,000円 | 5,000円 |
会社員(企業年金あり) | 12,000円 | 5,000円 |
会社員(企業年金なし) | 23,000円 | 5,000円 |
会社員(企業型DCのみあり) | 20,000円 | 5,000円 |
専業主婦・専業主夫 | 23,000円 | 5,000円 |
公務員 | 12,000円 | 5,000円 |
掛金の平均は?
実際にiDeCo(イデコ)に加入している方の掛金はどれぐらいなのでしょうか?
平成30年3月のデータによると、加入者の平均掛金額は16,222円でした。しかし、職業別にみると、自営業者は27,270円、会社員は14,352円、専業主婦(夫)は16,170円となり、掛金の上限によって平均金額も変動していることがわかります。
データ引用元:平均額はどのくらい? 個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金額
シミュレーションしてみる
iDeCo(イデコ)に加入する前に、まずはシミュレーションを試しましょう。
各金融機関では無料のシミュレーションサービスを提供しています。職業や年齢を入力すると、iDeCo(イデコ)の節税額や将来の受け取り年金額を確認できます。
運用利率などで受け取り金額は前後しますが、どれぐらい費用が必要になるか参考になります。
iDeCo(イデコ)の節税額を計算するなら、シミュレーションがおすすめ
金融機関を選ぶ
企業型確定拠出年金は企業が金融機関を選びますが、iDeCo(イデコ)の場合は個人で選ぶことができます。運用が初めてという方は、以下の3つのポイントをおさえて金融機関を選びましょう。
・手数料
・サポート
・商品ラインナップ
手数料が安いか
iDeCo(イデコ)では加入時、運用時、そして受け取り時に手数料が発生します。金融機関を選ぶ際に注意するのは運用時の手数料です。
運用時には、収納手数料、事務委託手数料、口座管理手数料の3つの手数料があります。このうちの口座管理手数料は金融機関によって金額が異なります。機関によっては口座管理手数料が無料のところもあるため、必ず確認するようにしましょう。
サポートが充実しているか
金融機関を選ぶ際は、サポート体制が整っているかが重要です。特に金融知識の少ない方は、すぐに相談ができる環境が必要になります。
公式サイトで相談窓口やコールセンターがきちんと設けられているかチェックしましょう。また、ネットでの評価を確認しておくこともおすすめします。
商品ラインナップが揃っているか
ポイント3つめは商品ラインナップです。できるだけ幅広く、さまざまな種類の商品を取り扱っている金融機関を選びましょう。
基本的にiDeCo(イデコ)の金融機関は1つしか利用できません。もし変更したい場合でも、投資したい商品が少ないと選択肢も狭くなります。元本確保型と元本変動型の両方が揃っているところを選ぶようにしましょう。
運用商品を選ぶ
金融機関は決まりましたか? それでは、実際に運用する商品を選びましょう。運用商品は主に元本確保型と元本変動型の2種類から選びます。
元本確保型
元本確保型は、元本を下回るリスクがない商品です。定期預金や保険が該当します。
元本確保型のメリットは、元本割れのリスクを伴わないことです。積み立てたら積み立てた分だけ年金の受け取り額も増えていきます。
一方で、資産が大きく増えないというデメリットもあります。リスクを抑えることはできますが、小さな掛金で大きな利益を狙うことはできません。
元本変動型
元本変動型は運用次第で資産が増額したり減額したりする商品です。投資信託が元本変動型に該当します。
元本変動型のメリットは掛金以上の資産を狙えることです。投資した商品の価格が上がれば、投資した以上の価値が生まれるからです。
その一方で資産を減らしてしまう可能性もあります。元本変動型は運用次第で資産が増減するため、元本割れのリスクを伴います。しかし、分散投資やバランス型の商品であれば、リスクを抑えることも可能です。
投資の知識がない方は、安易に元本変動型商品にするのではなく、販売員と相談しながら決めましょう。
資料請求をして申し込み
実際に申し込み手続きをしましょう。特に会社員の方と公務員の方は、手続き上で注意することがあります。必ず不備のないように準備しておきましょう。
資料請求
まずは資料請求をしましょう。請求方法は主に以下の3通りです。
①インターネット
②電話
③窓口
ただし、③に関しては、ネット証券など店舗を構えない金融機関ではできません。インターネットは24時間受付しているため、インターネットでの請求をおすすめします。
申し込みに必要なもの・書類
申し込みの際には以下のものを揃えましょう。
①基礎年金番号
②口座情報
③本人確認書類
資料請求で送付された個人型年金加入申出書に必要事項を記入します。さらに、会社員の方は事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書を、公務員の方は第2号加入者に係る事業主の証明書(共済組合用)を提出します。
書類の書き方
書類には以下の事項を記入します。
①加入者情報
②基礎年金番号
③納付方法
④口座情報
⑤掛金額
⑥企業型確定拠出年金の加入履歴
⑦勤め先情報
③に関しては、事業主払込もしくは個人払込のどちらかを選択します。事業主払込は給与天引き、個人払込は指定口座からの引き落としです。
また、⑥に関しては加入の有無で掛金の上限額が異なります。必ず正確な情報を記入するようにしてください。
会社員・公務員は注意
会社員と公務員の方は個人型年金加入申出書に加えて、申請書の提出を求められます。各申請書には事業主の署名および押印等の項目があります。その項目には勤め先のサインと印が必ず必要になります。
会社員もしくは公務員の方は、必ず勤め先にて申請書の記入を申し出てください。記入がないとiDeCo(イデコ)に申し込むことができません。
申し込みから運用までの期間
iDeCo(イデコ)の掛金の引き落としは毎月26日です。引き落し後に運用開始となります。
各金融機関の申し込み締め切り日までに申し込むと、翌月に初回の1ヶ月分が引き落とされますが、締め切り日を超えた場合は、翌々月に初回2ヶ月分の掛金が引き落としされます。
各手続きを完了するまでに最低でも1ヶ月はかかります。余裕を持って申し込みをするようにしましょう。
おすすめのiDeCo(イデコ)金融機関
iDeCo(イデコ)を取り扱っている金融機関は数多くあります。今回はその中でも手数料が安く、商品ラインナップが豊富な金融機関をご紹介します。
SBI証券
SBI証券では10年前からiDeCo(イデコ)を取り扱っており、実績のある金融機関です。そのため、商品ラインナップが充実しており、投資初心者から上級者向けまで幅広く取り扱っています。
SBI証券は商品ラインナップだけでなく、手数料が安いことでも知られています。口座管理手数料や移管手数料、さらには口座開設にも費用がかかりません。口座残高や拠出金額の条件なく、誰でも口座管理料が無料です。
楽天証券
楽天グループが展開する楽天証券でも、iDeCo(イデコ)のサービスが開始されました。楽天証券も口座管理手数料や初期費用は無料です。
また、楽天証券では、定期的にiDeCo(イデコ)のセミナーが開催されています。iDeCo(イデコ)についてもっと知りたいという場合は、参加することをおすすめします。
イオン銀行
イオン銀行のiDeCo(イデコ)も口座管理費が無料です。イオン銀行の特徴は、「たわらノーロードシリーズ」や「ひふみ年金」など、投資をしたことがない方でも選びやすい金融商品が揃えられていることです。
さらに、専用サポートツールSMART FOLIO〈DC〉でそれぞれの運用プランを提供してくれます。なお、イオン銀行は受付金融機関であり、実際の運営管理機関はみずほ銀行です。
りそな銀行
りそな銀行も手数料が無料になります。ただし、2018年12月28日までにiDeCo(イデコ)に新規加入、もしくは資産移管した方のみ、2年間手数料が無料になります。
また、りそな銀行ではiDeCo(イデコ)セミナーを各店舗で開催しています。セミナーでは個人向けだけでなく、中小事業主掛金納付制度のiDeCo+(イデコプラス)の説明会も開かれています。
適切な手順でiDeCo(イデコ)を始めましょう
今回はiDeCo(イデコ)の始め方について解説しました。加入手続きをする前に、自身の加入資格や掛金上限額を確認しましょう。
また、手続きに関しては、会社員の方や公務員の方は勤め先の印が必ず必要になります。書類に不備がないように、必ず確認するようにしましょう。