金融庁に手掛けられたNISA(ニーサ)は、2014年から施行された税制優遇制度です。2年後にジュニアNISAが、2018年から積立NISAが始まり、未成年や資産形成の目的に応じて投資家自身が利用する種類を選択することが可能となりました。今回は、このNISA制度と金融庁に関する情報を解説します。3種類のNISAの概要と現時点での利用状況、金融庁が積立NISA拡大のために開催する説明会やシュミレーションの提供などの施策についても解説します。これからNISA口座を開設し、利用する際には、公式の情報が配信されている金融庁の情報をまず確認しましょう。
金融庁からみるNISA(ニーサ)の情報
2014年から始まった税制優遇制度であるNISA(ニーサ)は、金融庁を主導に施行されている税制優遇制度です。NISA制度の利用はメリットやデメリットに応じて投資家によって使用・不使用が異なります。ここからは、金融庁からみたNISA制度について説明します。
NISA(ニーサ)とは
NISA(ニーサ)とは、一定期間内に一定金額内の投資資金から行なわれた投資の利益が非課税となる税制優遇制度です。イギリスで1999年から導入されていた「ISA(アイサ)」を参考にして、日本版ISAとして制作されました。このNISAには3種類あり、自身の投資スタイルや年齢に応じて利用するNISAを選択することができます。
以下でこの3種についてそれぞれの特徴を解説します。種類ごとに開始された時期や投資可能な上限金額などが異なるため、それぞれの性格を理解して自身に合ったNISAを選択していきましょう。
参考:NISAとは?(金融庁公式サイト)
NISAとは?初心者でも分かるNISA解説。種類と運用時の注意点
NISA(ニーサ)
2014年1月1日に施行された、「一般NISA(ニーサ)」と呼ばれて区別されるNISAです。
NISA口座を開設する年の1月1日時点で20歳を迎えていることが条件です。
NISAでは、1年間で運用益が非課税となる投資について投資資金額の上限があり、これを非課税枠と言います。一般NISAでは120万円と規定されています。
非課税期間とは、非課税適用を受けて資産運用を行うことができる期間です。投資開始時点の年から年単位で数えられるため、「最大で」と表記されます。(*1)
運用可能期間とは、NISA制度自体を利用することができる期間のことで、一般NISAは10年間の期間限定の制度です。
(*1:2015年1月と、同年12月から開始した場合ではどちらも2020年12月末で非課税期間は終了し、およそ1年間のギャップが生じます。)
ジュニアNISA
一般NISAの2年後、2016年に施行されたジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)です。
ジュニアNISAは未成年の投資家を対象にしたNISA制度として制作されました。
基本的な特徴としては一般NISAと同様な点が多いですが、未成年を対象とするNISAであることから、運用管理者が口座名義人に代わってジュニアNISA口座から資産運用を行うことができます。
口座名義人が18歳、3月31日時点で18歳である年の前年12月31日までは原則払出しを行うことができません。(*2)
(*1:両親や祖父母、兄弟姉妹などです。)
(*2:災害などの特例時にのみ非課税での払出しが可能です。それ以外の場合は過去の利益に遡って課税され、引き出しを行うことになります。)
積立NISA
一般NISAもしくは積立NISAのどちらか1つしか口座を開設することはできません。
分散投資を目的としたNISA制度であるため、年間の投資上限額は40万円と非常に少額です。毎月定額を積み立てたい場合には毎月33,333円を上限に行うことが可能です。(*1)
長期的な投資を目的とした積立NISAでは、一般NISAに比べて非課税期間が4倍の期間、設定されています。
非課税期間に応じて運用可能期間が設定されています。
積立NISAでは、金融庁によって厳選された投資信託のみを資産運用することができます。金融庁が規定した厳しい基準(*2)をクリアした162本(*3)だけが投資可能な対象商品として指定されています。
(*1:年間上限額40万円÷1年12ヶ月=毎月33,333円)
(*2:金融庁 「平成29年6月 つみたてNISA対象商品の要件」より。)
(*3:金融庁 「つみたてNISA対象商品届出一覧」より、2018年11月12日現在。)
参考:つみたてNISAの概要(金融庁公式サイト)
参照:つみたてNISA対象商品届出一覧(金融庁)
参照:つみたてNISAの対象商品の要件 平成29年6月(金融庁)
NISAの利用状況
3種類あるNISA制度自体のそれぞれの概要を説明しました。資産運用益が非課税となる大きなメリットのあるNISAですが、実際の利用状況はどうなのでしょうか。金融庁がまとめたNISA口座口座の利用状況に関する資料を2点見てみましょう。
[開設口座数(一般NISA・積立NISA)]
口座開設総数 | 1,167万7658口座 |
一般NISA | 1,117万196口座 |
積立NISA | 50万7,462口座 |
2014年から施行されている施行期間の長い一般NISAの口座数が最も多く、2018年1月1日から開始したばかりの積立NISA口座数がジュニアNISAよりも約24万口座多くなっています。
[平成30年1月〜3月期の新規口座開設数(一般NISA・積立NISA)]
新規口座開設総数 | 約69万口座 |
一般NISA | 約18万口座 |
積立NISA | 約50万口座 |
(*1)
2018年(平成30年)の1月〜3月の期間に新規開設されたNISA口座の総数を見ると、新規口座開設数の総数は約69万口座、そのうち50万口座は積立NISA口座となっており、積立NISA口座の新規開設率が非常に高いことが分かります。制度の施行期間によって現時点では一般NISA口座数が圧倒的に多いですが、今後積立NISA口座の数がさらに膨らむことが見込まれます。
(*1:およその数値のため、合計総数が1万口座ほど多くなっています。)
参照:平成30年4月 NISA口座の利用状況調査(金融庁)
参照:平成30年7月 NISA(一般・つみたて)の現状(金融庁)
参考:NISA口座口座の利用状況に関する調査結果の公表について(金融庁公式サイト)
積立NISAの普及に積極的
上述のように積立NISAは新規口座開設数の伸び率が非常に高く、さらに一般NISAが2023年で終了するのに対し、積立NISA制度が2037年まで運用可能なことも加わって、金融庁では国民の積立NISA口座新規開設に非常に積極的です。ここからは金融庁が行っている積立NISA口座新規開設を推奨するための様々な施策をご紹介します。
シミュレーション
シュミレーションとは、口座開設前に事前に自身の資産形成の目標から具体的な計画を提示してくれるサービスです。金融庁では「資産運用シュミレーション」として公式サイト内にて誰でもすぐに利用することができます。例えば、毎月の積立金額と想定利回り、積立期間の必要項目を入力することで、いくらの資産を形成することができるのかを算出してくれます。他には、積立期間と金利、目標金額、毎月の積立金額を入力することで、それぞれの具体的な数値を計算してくれます。
投資初心者にとっては、積立NISAの20年にも渡る資産運用によって将来的に自身の資産がどのようになるのか予測しにくい難点を、無料で解決することができ、非常に便利です。
説明会等の取り組み
NISAのなかでも安心して利用することができる積立NISAは、投資初心者でも利用開始のハードルが低く、きっかけがあれば簡単に始めることが可能となります。そこで、金融庁は特に積立NISAを契機として、より多くの個人投資家が資産形成に興味・関心を抱けるように説明会や交流会などを開催しています。
例)
「個人投資家との意見交換会」として2017年4月から始まりました。(*1)東京だけでなく、日本各地で開催され、投資初心者向けのイベントや女性投資家向けのものなど、参加可能な投資家を限定した集まりも随時開催されています。
身近な職場でNISAでの資産形成について学び、積立NISAを活用した資産形成を職場から支援してもらうことで福利厚生の増進を図る目的で行なわれる制度です。積立NISAに関する情報提供と、投資に関する知識に触れる機会を提供することで、積立NISAや資産形成を開始するきっかけを作ることができます。
職場積立NISA制度では、単に説明会を開催するだけでなく、積立NISAを取り扱う金融機関の公式サイトにNISA情報の掲載されているWebリンクを付けることや、投資について学ぶ際の教材作りなども行なわれています。例えば、金融庁のNISA特設サイトには、投資初心者向けのガイドブックが掲載されており、自由に閲覧・ダウンロードすることが可能となっています。(*2)
(*1:2017年10月に「つみたてNISA Meetup」、愛称「つみップ」へ名称が変更されました。)
(*2:「つみたてNISA 早わかりガイドブック」のことです。)
参考:つみたてNISA Meetup(金融庁公式サイト)
参考:NISA(一般・つみたて)の現状、「職場つみたてNISA」の取組みの現状等について(金融庁公式サイト)
参照:「職場つみたてNISA」の取組みの現状(金融庁)
参照:つみたてNISA 早わかりガイドブック(金融庁公式サイト)
参考:「職場積立NISA」について(日本証券業協会公式サイト)
動画教材の配信
国民の資産形成の促進の観点から、厚生労働省や関係団体の協力を受けて上述の「職場積立NISA」の際の活用を目的に若者向けのビデオ教材も制作されています。金融庁のNISA特設サイトにて誰でもいつでも自由に閲覧することが可能となっており、「職場積立NISA」以外にも様々な場で活用してもらえるように作られています。
参考:国民の資産形成促進のためのビデオクリップ教材公表について(金融庁公式サイト)
キャラクターPR
投資というハードルの高そうな分野なため、できるだけ親しみを持ってもらおうと、金融庁では広報を目的に公募からキャラクター「つみたてワニーサ」が選出されました。ジュニアNISAでは未成年の投資家を対象としている点で、パンフレットなどの様々な場面で活用されています。
参考:「つみたてNISAキャラクター」決定について(金融庁公式サイト)
期間延長申請
平成31年度、2019年度の税制改正に伴って、事前の改正要望項目にて「NISA制度の恒久化」が求められています。イギリスのISA(アイサ)制度を参考に制作されたNISAは、2014年に10年間の期間限定の税制優遇制度として施行されました。しかし、今回、国民の資産形成を促進する点から、NISAの制度期間について延長要望が出されました。
積立NISAは、運用可能期間(制度の施行期間)が2037年までと規定され、年間40万円の非課税枠を20年間活用することができるため、最大800万円の投資資金を使用して行った利益を非課税にて受け取ることができます。しかし、これは2018年から積立NISAの利用を開始した投資家のみが活用可能な金額で、例えば2020年から利用をスタートした場合には非課税期間が18年間となり、合計で360万円分の投資しか行うことができず、非課税適用を受けることができる利益額が投資家によって不公平となってしまいます。このような問題点に対して、積立NISA制度を行う金融庁がNISA制度の期間延長が要望されました。
NISA(ニーサ)の重要ポイント
金融庁によって資産形成の促進を目的に積立NISAの拡大に対して様々な対策が施されていますが、NISA(ニーサ)を利用する際に注意すべき点は何かあるのでしょうか。ここからは、NISA利用開始前に知っておきたい制度利用時の重要ポイントをお伝え意します。利用前にきちんと理解して、NISAを利用した効率的な資産運用を行っていきましょう。
マイナンバー提出は必須
マイナンバーとは、2016年から開始された制度で国民ひとりにつき12桁の番号が付けられ、社会保障・税金・災害対策について個人情報を国が一括で管理することができる仕組みです。証券口座の新規開設の際にはマイナンバーの提示が義務化され、既に証券口座を保有している投資家についても提出が必要で、2018年12月末までの提示が義務付けられています。もしも、それまでに提示しなかった場合は、2019年(平成31年)の1月1日から証券口座にて取引を行うことができなくなってしまいますので、期限内にきちんと提出しましょう。
また、金融機関によってマイナンバー提出時に必要な書類が異なるため、金融機関ごとの情報をきちんと確認しておきましょう。
参考:マイナンバー提供のお願い(日本証券業協会公式サイト)
NISAの口座開設にマイナンバーは必要?拒否した場合や提出のデメリットとは
ロールオーバー
ロールオーバーとは、一般NISA利用時の非課税期間終了に伴って非課税期間を延長することができる措置のことです。非課税期間終了時に新たなNISA口座を開設し、そちらの非課税期間を適用することでさらに5年間、非課税メリットを享受しながら資産運用を行うことができます。
さらに、非課税期間終了時に保有資産が含み損(*1)となっている場合は、ロールオーバーすることでその後の値上がりした際に資産売却を行うことが可能となり、投資家にとって大きなメリットとなります。
(*1:売却前の資産が損失状態にあることです。)
参考:NISAのポイント(金融庁公式サイト)
NISAのロールオーバーとは?概要やデメリットと上限撤廃のメリットを解説
金融庁からの正しい情報収集とその活用
2014年から開始されたNISA(ニーサ)制度は、金融庁にて手掛けられた税制優遇制度です。3種類あるNISAのうち、積立NISAは2018年に始まったばかりの制度ですが、投資初心者にもハードルが低く、きっかけを作ることで投資を始めやすくなるメリットがあります。このメリットを利用して、金融庁では資産形成の促進のために積立NISAを広める目的で様々な施策が行なわれています。職場にて外部の専門家から投資について学ぶ機会を設けたり、初心者や女性向けの説明会が全国各地で開催されています。さらに、金融庁公式サイトにてNISAのガイドブックや動画が掲載され、シュミレーションにて具体的な資産形成の計画を確認することも可能です。全て無料で自由に閲覧することができますので、NISA口座開設前にチェックしてみましょう。