NISAのロールオーバーの概要をわかりやすくまとめました。
ロールオーバーのデメリットや、ロールオーバーを行ったほうがよいパターンなども解説し、税制改正による上限撤廃とは何なのかもお伝えします。
2018年の末に初めての5年目を迎え、非課税期間が終了するNISA口座についてロールオーバーの申込に迷っている場合などに参考にしてみてください。
NISAロールオーバーの概要
ロールオーバーとは、``非課税期間が終了した際には、NISA口座・ジュニアNISAで保有している金融商品を翌年の非課税投資枠に移行(移管)すること``です。
2018年末の初めての「5年後」、NISAロールオーバーとは
2014年に始まったNISA制度は、今年2018年の年末に初めての5年の非課税期間の終了を迎えます。
ここからは、期間の満了後の「ロールオーバー」について解説します。
ロールオーバーのメリット
ロールオーバーによって非課税期間の延長を行うことのメリットは何なのでしょうか。
上限なく非課税を継続でき、複利効果
2018年からロールオーバーの上限額撤廃が行われました。
従来のNISAでは、非課税期間の終了の際に、120万円分までしか新しいNISA口座に移管できませんでした。
(従来)
・120万円分の金融商品→ロールオーバー
・残りの資産→売却、もしくは特定の口座へ移管
2018年から始まった新制度では、非課税期間終了後、保有している商品の価値に上限なく、全ての資産のロールオーバーが可能になりました。
(新制度)
・150万円分の資産→全資産ロールオーバー
長期投資を考えている際に便利
非課税期間が終了したときに、当初の購入価格と比べて損失が発生してしまっているケースも考えられます。
今後の上昇が予測できると判断し、ロールオーバーを行うことで、後に価格が上がったタイミングで売却を行うことができます。
さらに、そこでの利益は非課税となります。
上限までの未使用枠は新規買い付けができる
ロールオーバーを行った際に、保有資産の価値が120万円以内であった場合には、翌年の非課税枠の120万円との差額分は、非課税で投資を行うことができます。
例えば、非課税期間の終了時に保有資産が90万円であった場合、ロールオーバーしたNISA口座6年目には30万円分の新たな投資を行うことができます。
ロールオーバーのデメリット
非課税期間の延長という大きな利点のあるロールオーバーですが、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
同一金融機関のみ
ロールオーバーを行うには、初めてNISA口座を開設した金融機関で5年間同じ金融機関のNISA口座を使っている必要があります。
5年の非課税期間の間で1度でも金融機関の変更を行うと、ロールオーバーは行うことができません。
時価が非課税枠以上の場合、新規買い付けは不可
非課税期間の終了時の保有資産の価値が150万円であったケースです。
年間の非課税枠は120万円なので、ロールオーバーによって120万円以上の移管が行われた場合にはその年の投資上限額を使い切ったと見なされます。
NISA口座6年目は新規の投資を行うことができません。
ロールオーバーはいつまで?
ロールオーバーによって最大限のメリットを受けられるのは、2018年投資分までになります。
これは現在のNISAが2023年までの期間限定の制度となっているためです。
2024年以降にはNISA口座は無くなってしまうため、ロールオーバーによって享受できる最大10年間の非課税期間というのは、2018年投資分までとなるためです。
2019年以降に現行のNISAで投資した分は、5年の非課税期間終了後に売却もしくは課税口座に移管するという選択肢のみ行うことができます。
ロールオーバーをすべき人
非課税期間の終了時に保有している資産を売却や課税口座へ移管する他の選択肢もあるなかで、ロールオーバーを行うべきひとというのはどのようなひとなのでしょうか。
含み損が出ている人
NISA口座では、特定口座や一般口座などの他の口座との損益通算や損失についての繰越控除を行うことができません。
そのため、含み損(*1)がある場合に、課税口座へ移管すると、大きな負担を被る可能性があります。
例)(途中での取引が無かったものとします。)
・NISA口座からの購入時の価格:120万円
・非課税期間が終了時の価値:80万円
このケースで、通常の課税口座に移管したとします。
移管時の価値は当初の購入価値として扱われるため、移管後は80万円でこの株を購入したとされます。
その後に100万円まで値上がりした時点でこの株を全て売却したとすると、
[売却金100万円]ー[購入価格80万円]=[+20万円]
20万円は利益とされ、税金が課されます。
結果的に当初120万円で購入した株が、含み損によって20万円のマイナスとなった上に、さらに税金を課されてしまうことになります。
このようなケースにロールオーバーを行うことでリスクを回避することが可能です。
(*1:株式の購入価格と時価を比較した際の、決済前の損失のこと。)
参考:課税口座へ移す際の注意点[金融庁公式サイト NISAのポイント]
長期投資をしたい人
また、継続して長期的な投資を行いたいひとにとってもメリットです。
ロールオーバーによって投資期間がさらに5年伸び、非課税での投資可能額も増えるためです。
ロールオーバーの手続き
ロールオーバーを申し込みたい場合には、自身の保有しているNISA口座の金融機関の手続きに沿って行っていく必要があります。
[SBI証券]
公式HPにて、売却期限など、手続きの具体的な記載がなされています。
必要書類を記載して返送し、NISA口座の開設状況が、条件を満たしていればロールオーバーの手続きが完了となります。
[楽天証券]
こちらも公式サイトにて案内が掲載されています。
ロールオーバーの申込手続きについては、金融機関によって少しづつ違います。
自身のNISA口座の金融機関の情報をきちんと確認するようにしましょう。
ロールオーバー以外の「5年後」の対応
5年の非課税期間が終了した際のNISA口座の資産の対応についてロールオーバー以外にも売却・課税口座への払い出しという2つの選択肢があります。
5年以内に売却
5年の非課税期間の終了前に、保有している株式や投資信託などを全て売却する方法です。
金融機関ごとに売却可能期限が指定されていますので、それぞれのHPからなど確認しておきましょう。
また、売却はタイミングが非常に大切で、売り時を逃すことで大きなマイナスとなってしまいます。
そこで、購入時にルールを決めるておくことで売却しやすくなります。
NISAの場合には5年という制限があるため、損切り(*1)や購入時から20%上がったら売却するなどの具体的なルールを決めておくようにしましょう。
(*1:資産に損失がある状態で売却すること。損失の拡大を防ぐ目的で行われます。)
特定口座へ払い出し
2つ目の選択肢としては、特定口座や一般口座への払出しがあります。
払い出しとは資産を口座から引き出すことで、現在保有しているNISA口座から、特定口座や一般口座に資産を移管することです。
特定口座や一般口座へ移管後に、資産に利益が出た場合は課税対象となります。
その他の長期投資向け商品
一般NISA以外にも長期投資に適した商品があります。
積立NISA
積立NISAは、一般NISAと同じシステムで一定期間内、一定金額内にて行われた投資については非課税となる制度です。
一般NISAに比べて資産形成の意味が強く、最長20年間、年間40万円以内の投資であれば、そこから発生した利益について非課税のメリットを受けることができます。
しかし、ロールオーバーは行うことができないので注意が必要です。
iDeCo
もうひとつは「iDeCo(イデコ)」という、自分で積み立てる私的年金の制度です。
申込も任意、掛け金から運用方法まで自身で決定し、60歳まで(*1)運用を行うことができます。
60歳以降、掛け金と運用益から給付を受けることができ、給付を受ける際に税制について優遇措置を受けることができます。
(*1:60歳以降でないと、引き出しを行うことができません。)
ロールオーバーの概要、メリット・デメリットを理解し、手続きの判断をしましょう
NISA口座の非課税期間の延長措置であるロールオーバーについて見てきました。
最大10年も非課税の恩恵を受けることのできる魅力あるシステムな一方で、ロールオーバーを行うことのできる条件やデメリットもあります。
ロールオーバーについてきちんと理解した上で、手続きを行うかどうか判断しましょう。