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海外赴任時のNISA(ニーサ)はどうなる?手続きと注意点も解説

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日本在住者が利用することのできるNISA(ニーサ)において、海外赴任によって投資家が日本の非居住者となった場合に口座や保有資産はどのようになってしまうのでしょうか。出国前に行うべき手続きや注意点、資産に対して講じるべき対応と海外赴任の可能性がある投資家におすすめな証券会社もご紹介します。海外赴任時のNISA口座についてきちんと理解して、最適な対応をとれるようにしましょう。

NISA利用者の海外赴任先の画像

海外赴任時のNISA(ニーサ)に関わる対応とは

2014年から始まったNISA(ニーサ)は、満20歳以上の日本在住者であれば誰でも利用することができます。では、海外赴任によって日本から離れることになった場合、NISAを利用することはできるのでしょうか。海外赴任時におけるNISA利用に関する対応をお教えします。

そもそも海外赴任の定義とは

海外赴任とは、仕事の転勤などで海外へ住むこと、つまり日本の非居住者となることを意味しています。海外赴任によって、基本的に日本以外の海外に長期間住むことになり、日本の居住者とは扱われなくなります。日本の居住者ではない人のことを「非居住者」と言い、1年以上に渡って生活拠点が日本ではない外国となった場合に該当します。

例えば、SBI証券では公式サイトにて「非居住者の定義」として6項目が具体的に提示されており、これに該当する場合は帰国まで資産を預けておくことができます。

参考:居住者と非居住者の区分(国税庁公式サイト)
参考:海外転勤等の理由により出国(非居住)される方への対応について(SBI証券公式サイト)

海外赴任時はNISA(ニーサ)口座

NISA(ニーサ)を利用することができるのは「日本に居住している20歳以上の方(*1)」とされ、海外赴任によって日本の非居住者となる場合にはNISA口座を使用することができず、NISA口座は廃止されることになります。以下より、実際に海外赴任によってNISA口座が廃止されるケースについて説明します。

(*1:口座開設年の1月1日時点を基準として数えられます。ジュニアNISAでは0〜19歳の未成年が対象です。)

参考:NISAの概要(金融庁公式サイト)

NISA口座は廃止

NISAは上述の通り「日本居住者」のみが開設することができ、日本人であるかどうかは関係ありません。(*1)NISA口座利用者が日本の非居住者となった時点でNISA口座は廃止され、NISA口座内の資産は非課税適用を受けることができなくなります。

(*1:世界的に居住地の税制が適用され、納税の必要が生じるため、居住者かどうかで判断されます。)

参考:NISAの概要(金融庁公式サイト)

特定口座も廃止

NISA口座廃止に伴って、保有資産は確定申告の必要がある一般口座に移管されることになります。海外赴任によって日本の非居住者となることで、海外赴任先の国民と同様の扱いになり、出国先である海外にて納税手続きを行うことになります。そのため、日本の証券口座を保有していても課税されない一般口座に資産が移管されることになり、税金のかかる特定口座は廃止されることになります。

これは、売買取引を行わなくても株式保有の際の配当金がある場合に、海外赴任先と日本で二重課税となってしまうリスクを防ぐためです。

参考:休眠口座のお取扱い(マネックス証券公式サイト)

帰国時に特定口座に戻すために

出国前にNISA口座から一般口座へ移管しそのまま預けていた資産を、海外赴任先から帰国した際に改めてNISA口座へ戻すことはできません。ただし、出国前に「非課税口座内上場株式等移管依頼書」を提出し、きちんと手続きを行っていた場合に、特定口座へは帰国時に資産を戻すことが可能になります。

1度特定口座にて保有していた資産についてはその後に特定口座へ戻すことができるため、出国前のNISA口座廃止手続きの際に一般口座へ直接資産を移管せず、一旦特定口座に移管してから海外居住手続きをして一般口座へ移管することで帰国後の複雑な手続きが不要となります。

海外赴任時のNISA口座関連の手続きの注意点

ここまで、海外赴任によってNISA口座利用者が日本の非居住者となる場合について簡単にお伝えしました。手続き自体は難しくなく、出国前にきちんと手続きを踏んでおくことで帰国後の手間がかかりません。しかし、海外赴任に伴って必要となるNISA口座にまつわる手続きを行う際には注意すべきポイントも幾つかあります。そこでここからは、手続きの際の注意点を5点お教えしますので、海外赴任によってNISA口座の廃止手続きが必要な投資家の方は参考にしてください。

出国届出書を金融機関に提出

日本の非居住者となることでNISA口座は廃止されますが、日本出国の前日までにNISA口座の金融機関から「出国届出書」を取り寄せ、提出する必要があります。

(1)NISA口座を開設された方が出国により非居住者となられた場合(※)、NISA口座が閉鎖(廃止)され、NISA口座にお預けになっている上場株式や株式投資信託等は特定口座又は一般口座に移管され、非課税の適用を受けることができなくなります。
※出国により非居住者となる場合は、その出国する日の前日までに「出国届出書」をNISA口座を開設している金融機関に提出しなければなりません。

引用:その他 よくある質問(日本証券業協会公式サイト)

この出国届出書を提出すると、出国日にNISA口座が廃止されることとなります。

参照:居住地変更に関する届出書(カブドットコム証券株式会社)

口座開設のタイミングは4年毎

制度の施行期間が10年間と制限されているNISAでは、施行期間内を2分割したNISAが適用できる期間のことを「勘定設定期間」として規定しています。

  1. 第一勘定期間:2014年1月1日から2017年12月31日まで(4年間)
  2. 第二勘定期間:2018年1月1日から2023年12月31日まで(6年間)

NISA口座では、勘定設定期間の区切りごとに住民票を提出し、NISA口座利用者の居住地が確認される仕組みとなっています。期間ごとにNISA口座の開設が必要となるため、海外赴任先から帰国してもすぐにその年にNISA口座を開設することができません。期間の切り替えタイミングにのみNISA口座の開設が可能となっています。例えば、2015年の1月に日本へ帰国した場合にはNISA口座開設までにおよそ3年かかることになります。

参考:NISAの勘定設定期間とは何ですか?(みずほ証券公式サイト)
参照:NISAをご利用のお客様へ(日本証券業協会)

株主優待の受取住所変更

居住地が海外に移った場合でも、株式を保有している限り株主であるという事実は変わらず、保有株式の配当金や株主優待を貰うことができます。基本的に物品が企業から提供される株主優待は、受取り時の住所を指定する必要があります。株主優待の発送は、株式を管理している金融機関が企業に委託されて行っており、自身の保有株式企業の委託先金融機関(*1)へ住所変更の届出を提出して送付先を日本国内にて受取り可能な場所へ変更する必要があります。(*2)

(*1:企業によって委託金融機関は異なります。)
(*2:多くの企業では株主優待の海外発送に対応していないことが多いです。)

海外赴任時の口座維持が可能な証券会社かどうか

上述の通り、海外赴任によって投資家が日本の非居住者となることで、NISA口座から取引を行うことができません。そこで、通常証券口座に資産を移管することで、帰国まで取引を行なわずに資産を預けておくことが可能となっています。日本の証券口座を海外居住時も継続して開設し、取引が行えなくても資産を預けておけることで、出国までに無理に資産売却を行う必要がなくなります。しかし、金融機関によっては非居住者は通常証券口座へ資産を移管し、海外赴任時に口座を維持することができないところがあります。そこで、海外赴任の可能性がある投資家は、日本の非居住者でも口座を継続して開設、資産を預けておける金融機関にて投資を行っていくことが大切になります。

例えば、日本のネット証券会社の最大手、SBI証券では帰国までの間も証券総合口座に資産を預けておくことができますが、楽天証券では日本非居住者は出国前に資産を売却するなどして総合取引口座を解約する必要があります。金融機関によって対応が異なり、自身の資産への影響が大きく違ってきますので、きちんと確認しておきましょう。

参考:海外転勤等の理由により出国(非居住)される方への対応(SBI証券公式サイト)
参考:変更・口座解約(楽天証券公式サイト)

配当金の受け取り方法を変更

取引を行わずに日本の証券口座に資産を預けている場合でも配当金を受けることができますが、上述の通り、海外赴任によって日本の非居住者となることで、出国先で納税することになり、日本の税金を納める必要はありません。そのため、配当金に対する税金も支払う必要がありません。

配当金の受取方法には、郵便局に書類(*1)を持参してそのまま受け取る「配当金領収証方式」、指定の銀行口座での受取り「登録配当金受領口座方式・個別銘柄指定方式」、証券口座にて受け取る「株式数比例配分方式」(*2)の3種類がありますが、受取方法によっては受取時に既に源泉徴収された配当金を受け取ることになることがあり、二重課税となってしまいます。そこで、配当金に源泉徴収されない「株式数比例配分方式」を選択することで日本の税金が引かれることなく配当金を受け取ることが可能となります。

(*1:「配当金領収証」を持ち込むことで配当金受取りが可能です。)
(*2:受取方法のなかで唯一証券会社を経由することで、証券口座の名義人の居住地が海外であることが分かり、課税されなくなります。)

参考:NISA口座における上場株式の配当金等受取方式に関する注意事項(日本証券業協会公式サイト)

口座移管時は時価で評価される

日本非居住者となることでNISA口座が廃止され、保有資産を課税口座へ移管することになりますが、資産移管は移管時の資産額で行なわれることになるため、資産移管時に保有資産が含み損(*1)であった場合には損失に加えて課税されるリスクがあるため注意が必要です。NISA口座にて100万円の資産を購入し、海外赴任によって課税口座への移管が必要となったケースで考えてみましょう。

例)

  • 課税口座への移管時の資産額は80万円
  • 移管先課税口座では80万円の資産として扱われます。

  • その後、海外からの帰国後に課税口座から資産額が90万円となった時点で売却
  • 当初の購入価格から10万円の損失が生じていますが、課税口座移管時の資産価格が80万円であったため、10万円の利益が発生したと見なされ課税されます。このケースでは、具体的に10万円の損失に加えて、10万円の利益に対する20.315%(*2)の税金20,315円が投資家のマイナスとなります。

    (*1:売却前の資産が損失状態にあることです。)
    (*2:所得税15.315%、住民税5%。所得税には「復興特別所得税」として0.315%が含まれています。)

    参考:NISAのポイント(金融庁公式サイト)

    iDeCo(イデコ)は海外赴任時も可

    iDeCo(イデコ)とは、毎月定額を掛金として積み立て、指定した金融商品へ投資、資産運用することで私的年金を拠出する、個人型確定拠出年金」のことです。iDeCoの加入条件には「海外に居住している国内非居住者」という点があり、基本的には海外赴任によって日本の非居住者となって時点で利用することができなくなります。

    しかし、iDeCoの場合には一部例外が適用され、口座維持が可能となる証券会社があります。

    例)

  • SBI証券:帰国するまでの間、口座維持が可能
  • SMBC日興証券:手続き、承認によって規定範囲内での口座維持が可能
  • 楽天証券:取引不可
  • SBI証券やSMBC日興証券では口座維持が可能なのに対し、楽天証券では日本の非居住者となることで一切の取引を行うことができなくなります。口座内の残高を資産の売却などによってゼロにし、解約手続きを行う必要があります。このように、証券会社によっては海外赴任によって口座維持ができずに解約しなければならないことがあるため、しっかり確認しておくことが重要です。

    参考:iDeCoってなに?(iDeCo公式サイト)
    参考:海外転勤等の理由により出国(非居住)される方への対応(SBI証券公式サイト)
    参考:海外へ転居する場合の手続き(SMBC日興証券公式サイト)

    NISA口座で運用をしていて、海外赴任になった際にすべきこと

    ここまで海外赴任が決定した際の手続きと注意点を解説しました。ここからは注意点を踏まえて、実際に保有資産に対してどのような対応を講じるべきなのかを2点お教えします。日本の非居住者となることで上述のように様々な変化がありますので、具体的な対応を理解して慌てずに対応していきましょう。

    海外赴任時も口座保有が可能な証券会社で取引

    1点目は海外赴任時の日本の非居住者の状態でも口座を維持することができる証券会社にて取引を行うことです。口座を解約しなければならない場合には、出国前までに無理やり売却する必要があり、投資家にとって負担となりますが、口座維持によってNISA口座から課税口座へ資産移管を行い、継続保有が可能となります。

    海外赴任先の現地証券会社で口座開設

    2点目は、海外赴任先の国で現地の証券会社口座を開設する方法です。日本の証券口座を維持していても取引を行うことができず、非常に不便で、効率的な資産形成を行うことができません。そこで日本の証券口座で保有している資産を海外証券口座へ送金し、新しい証券口座から売買取引を行うことが可能となります。ただし、手数料がかかってしまう難点があるため注意が必要です。

    海外赴任時にも口座が残せるネット証券会社

    日本での資産運用益をできるだけ無駄にしないために、海外赴任によって日本の非居住者となった場合も口座維持が可能な証券会社にてNISA口座を開設することが大切です。そこでここからは、海外赴任の可能性がある投資家のために、海外赴任時も口座維持が可能となるネット証券会社をお教えします。

    SBI証券

    ネット証券会社の最大手、SBI証券のNISA口座です。手数料の安さと投資可能な金融商品の数について業界最高水準を誇ります。SBI証券のNISA口座口座では日本の非居住者となった場合に、NISA口座・iDeCo口座の両方で口座維持が可能です。

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    参考:海外転勤等の理由により出国(非居住)される方への対応について(SBI証券公式サイト)

    マネックス証券

    海外株式、特に米国株式と中国株式投資に強いマネックス証券のNISA口座では、海外赴任に伴って「休眠口座」として口座維持が可能です。この休眠口座は、手続きを行うことで、出金以外の取引が全て制限されることになります。

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    参考:取り扱いについて(マネックス証券公式サイト)

    海外赴任時の注意点を理解し、適切に運用を進めましょう

    海外赴任によって、居住地が日本から海外へ移ることでNISAの利用に関する状況が大きく異なります。さらに、海外赴任時の資産についても証券会社によって採り得る対応が違い、投資家の負担や手間、帰国後の状況が大きく異なることになります。日本の非居住者となる際の手続きにおける注意点も解説しましたので、海外赴任の可能性がある場合にはきちんと理解して自身の資産運用に役立てていきましょう。

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