株式投資の配当金にかかる税金について説明します。配当金に対する税金は、源泉徴収にて天引きされますが、場合によっては確定申告が必要であったり、払いすぎた税金が還付されたりすることがあります。自身の保有資産の状態に合わせて、最適な課税方法も選択可能ですので、きちんと理解して効率的な資産形成に役立ててみてください。
上場企業株式の配当金に税金はかかる?
上場企業の株式の配当金は、課税対象です。ある企業の株式を購入して投資を行うと、企業の業績が良い場合に、利益の一部が投資家に還元されます。
株式の配当金や投資信託の収益分配金で得られる所得は、「配当所得」と言われ、所得税や住民税が差し引かれます。株式投資の配当金に対する税金に関する情報を確認したうえで、自身の投資に役立ててみてください。
配当金への課税率は?
次に、配当金に対する課税率を說明します。株式投資の利益に対しては、所得税と住民税が課税されますが、配当金には住民税はかかりません。配当金に対してかかる税率を確認しておきましょう。
また、自身が大口株主である場合とそうでない場合とで課税率は異なります。自身が該当するパターンの課税率を確認しましょう。
参考:No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得) (国税庁公式サイト)
大口株主を除く株主の場合
大口株主とは、企業の株式の大多数を保有している株主のことで、「大株主」とも言われます。発行済み株式に対して、保有株の比率(持ち株比率)が高い株主を指し、国税庁では、「3%以上に相当する数又は金額の株式」を保有する株主を大口株主としています。
大口株主でない場合は、株式投資で得た配当金に対して15.315%の所得税がかかります。これは、所得税15%に加えて、平成25年から上乗せされた、0.315%の、復興支援特別所得税を合計した数です。
大口株主の場合
一方で、発行株式に対する保有株式数が3%以上に相当する数、又は金額の株式を保有している大口株主の場合は、所得税と復興特別所得税を合計した20.42%が課税されます。
配当金は源泉徴収される?
配当金は、源泉徴収によって上述の税率に当たる金額が差し引かれたうえで、投資家の手元に渡ります。
源泉徴収とは、配当金が配布される度に、配当金額に対する上述の税率が差し引かれることです。配当金に対しては、特定口座の源泉徴収区分(源泉あり・なし)に関わらず、全ての投資家が源泉徴収によって是金が差し引かれます。
配当金への課税と確定申告の仕組みは?
配当金への課税と、確定申告の仕組みを解説します。課税対象である配当金ですが、確定申告の必要はあるのでしょうか。配当金と確定申告についてきちんと理解して、年末に慌てることがないよう、準備しておきましょう。
配当を受け取った際には確定申告は必要?
配当金を受け取った際に、確定申告を行う必要はあるのでしょうか。大口株主の場合と、そうでない場合それぞれで状況が異なります。自身が該当するケースの情報を確認しておきましょう。
大口株主を除く株主の場合
大口株主でない場合、確定申告を行う必要はありません。配当所得は、原則確定申告の対象です。しかし、大口株主でない場合は、大口株主以外の上場株式の配当は源泉分離課税とされているため、確定申告は不要です。
大口株主の場合
発行株式数に対する保有株数や金額が3%以上を占める、大口株主の場合は、確定申告を行わなければなりません。
大口株主の場合、上場株式の配当から20.42%の源泉徴収が行われた上で、総合課税で確定申告を行うことになります。大口株主かどうかで、課税率だけでなく、手続きの必要・不要が異なるため、きちんと確認しておきましょう。
上場株式の配当金に対する課税方法
次に、配当金に対する課税方法を3種類説明します。大口株主を除く株主の場合は、受け取った配当金額に応じて、以下3種類の課税方法の中から有利な課税方法を自由に選択できます。
自身の保有資産の状態に応じて最適なものを選択できるよう、確認しておきましょう。
総合課税
上場株式の配当金に対する課税方法の1種類目は、総合課税です。
総合課税とは、他の所得と合算して税金を計算する制度です。株式投資の配当金は何も手続きを行わないと、自動的に源泉徴収にて税金が天引きされますが、確定申告を行って総合課税とすることが可能です。
給与所得や不動産所得、その他の総合課税の対象となる所得を合算した総所得金額から、所得控除を差し引いて、累進税率を適用して税額が算出されます。累進税率は、所得額に応じて税率が5%〜45%、住民税は一律10%の比率税率となります。(*1)
(*1:源泉徴収および確定申告の際に所得税額の2.1%に相当する復興特別所得税が付加されます。)
申告分離課税
上場株式の配当金に対する課税方法の2種類目は、申告分離課税です。
申告分離課税とは、ある所得を他の所得と合算せず、分離して税金を計算する制度です。申告分離課税を選択すると、ある特定の所得に対して、20.315%が課税されます。
申告不要(源泉徴収)
上場株式の配当金に対する課税方法の3種類目は、申告しない方法です。株式の配当金は、源泉徴収にて税金が天引きされます。そのため、確定申告をせず、源泉徴収税率20.315%だけで課税関係を終了することも可能です。
よりお得にするためには?
所得には、所得に応じて段階的に税率が上がっていく累進課税制度が適用されます。そのため、所得が低い場合には、総合課税を選択できると、税率を少なくできます。ただし、配当所得が加わったことで、累進課税制度の税率の区分が上がり、結果的に源泉徴収による課税よりも高くなる可能性があるため、注意が必要です。
また、申告分離課税を選択すると、株式投資による損失と配当金を損益通算できて、損失が配当額より大きい場合には税がかからなくなります。さらに、配当金と損益通算を行っても損失が相殺できない場合は、繰越控除を行って翌年以降に持ち越せるメリットがあります。
できるだけ安い税額で済むように、自身の保有資産や年間の投資の結果に応じて、最適な方法を選択しましょう。
外国株投資を行った際の配当課税
外国株投資を行って、配当金を受け取った場合は、外国現地の租税条約に基づいて源泉徴収にて税金が天引きされます。さらに、税金が差し引かれた金額に対して、日本の配当課税がかかります。
つまり、外国と日本の双方から二重課税されることとなります。そのため、確定申告を行うことで、外国税額控除を受けられます。
外国株投資による配当金や売却益にかかる税金について。確定申告と二重課税についても解説
配当金は課税対象であるため正しい確定申告でお得に運用
株式投資の配当金について説明しました。配当金に対する税金は、保有株数や金額によって、課税率が異なり、確定申告の必要の有無も違います。知識がないと、必要な手続きを行えていなかったり、最悪の場合脱税となったりする可能性があります。自身が保有している株数や金額を確認したうえで、配当金に対してかかる税率をきちんと確認することが大切です。
また、投資家が自由に選択可能な課税方法は、選ぶ方法によって、実際に支払う税額が変わってきます。できるだけ安い税額で済むよう、課税方法についてきちんと理解して、自身の保有資産の状態に最適な課税方法を選択できるようにしましょう。