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株式投資のリアルタイム時間外取引「PTS取引」とは?活用方法と注意点も解説

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株式投資の時間外取引、「PTS取引」について解説します。PTS取引とはどのような取引なのか、行うことで投資家が得ることが可能なメリットと被るリスクのあるデメリットをお伝えします。さらに、PTS取引の活用方法と実際に利用する際の注意点をお教えします。自身の投資歴等を考慮したうえで、利用するかどうか判断する際に役立ててみてください。

株式投資の時間外取引時間帯を表す時計の画像

株式投資における時間外取引

株式取引は、全国にある証券取引所で行なわれます。証券取引所は一部・二部といったように業績によって市場が分かれます。株式市場での株式取引は、基本的に制限された時間内で取引を行う必要がありますが、現在ではこの時間以外で取引を行うことが可能となっています。

参考:東京証券取引所 市場概要(日本取引所グループ公式サイト)

時間外取引とは

時間外取引とは、株式市場が開いていない時間帯に株式取引を行うことです。

証券取引所は平日のみの開場で時間も決まっており、投資家は基本的に平日の開場時間内で直接株式取引を行う必要があります。証券取引所の開場時間は2部制となっています。

証券取引所の開場時間(平日のみ)
前場:9:00〜11:30(*1)
後場:12:30〜15:00

実際の取引時間は上述の時間となり、この時間以外の株式取引は全て「時間外取引」となります。株式売買注文自体は開場時間以外に行うことが可能で、ほとんど24時間365日、注文を受け付けている証券会社も少なくありません。

(*1:2011年11月21日より取引時間が延長されました。)

参考:営業時間・休業日一覧(日本取引所グループ公式サイト)

PTS取引

平日の日中に働いているサラリーマン投資家の方などは、市場の開場時間にリアルタイムな株式取引を行うことが難しいと思います。証券会社がそのような投資家のために、独自で提供している取引所サービスとして「PTS取引」があります。ここからは、PTS取引について

PTS取引とは

証券会社が独自に提供する、私設夜間取引システムのことです。市場の開場時間に取引を行うこが難しい投資家のために、市場の閉場時間でも取引を行うことができるサービスです。夜間取引に限らず、証券取引所以外で行なわれる取引のことを指します。

現在はSBI証券のみ

PTS取引を行うことができるシステムとして、SBIジャパンネクスト証券が運営する「J-Market」があります。現在日本国内でPTS取引を行うことができるのはこのシステムのみとなっており、SBI証券以外にも楽天証券と松井証券にて口座開設を行っていれば、新たな手続きを行なわずに時間外取引を行うことができます。

  • J-Marketシステムにて取引可能な時間帯
  • 昼間取引 8:20〜16:00
    夜間取引 17:00〜23:59

    昼間取引時間内の市場の開場時間と重なる時点では、取引所とPTSの価格それぞれを比較し、よりお得に取引することが可能な方で自由に取引を行うことができます。

    参考:PTS(昼・夜) (SBI証券株式会社公式サイト)
    参考:PTS取引・SOR注文(楽天証券株式会社公式サイト)
    参考:PTS(松井証券株式会社公式サイト)

    メリット

    PTS取引を行うことで、平日の日中の忙しい時間帯以外にもリアルタイムで株式取引を行うことができるメリットがあります。また、手数料の安さもメリットで、株価が同じ場合に証券取引所にて通常の日中取引を行うよりも安く取引を行うことが可能です。

    例)5万円以内で株式売買取引を行いたい場合の手数料(SBI証券の場合)

    1. 日中取引
    2. 手数料:54円(税込)

    3. PTS取引
    4. 手数料:50円(税込)

    さらに、PTS取引では取引所よりも呼値(よびね)を小さく注文を出すことができます。呼値とは、株式売買注文を行う際の価格の刻みのことです。銘柄の値段によって単位が異なり、PTSでは東京証券取引所と同じもしくは細かく設定されています。例えば、取引所で株価が5,000円〜10,000円の際に呼値が10円単位と設定されていた場合には、8000円の株式に対して8005円で注文を出すことができません。この注文可能な単位がPTSを利用することで小さくなり、少しでも高く売りたい・安く買いたいという場合にはメリットとなります。

    参考:当社取引所手数料(スタンダードプランとの比較) (SBI証券株式会社公式サイト)
    参考:呼び値/呼値 (よびね) (SMBC日興証券株式会社公式サイト)

    デメリット

    一方で、同様の銘柄複数売買取引を行った際に現物の受渡を行なわず、全体の売買の差額のみを決済する「差金決済」に該当する可能性があり、注意が必要となるデメリットがあります。差金決済とは同日内に同一資金から同一銘柄を複数回購入することで、法令により禁止されている決済方法です。

    例)差金決済に該当するケース
    12月1日の夜PTS取引にて100万円の投資資金から株式Aを購入し、12月1日(当日)の夜PTS取引時間内に株式Aを売却。
    12月2日(翌営業日)に取引所にて株式Aを購入

    PTS取引によって夜間時間も取引を行うことができ、取引可能時間が長くなることで、日中取引に比べて差金決済となってしまう可能性が高まります。

    参考:差金決済(さきんけっさい) (楽天証券株式会社公式サイト)
    参考:差金決済取引(SBI証券株式会社公式サイト)

    PTS取引の活用方法

    取引所の開場時間以外にも売買取引を行うことが可能となるPTSを株式投資に活用する方法を2種類お教えします。自身の株式投資に役立てていきましょう。

    好材料・悪材料を利用

    好材料とは、株価に対して好影響のあるニュース、悪材料とは反対に株価に悪影響を及ぼすニュースのことを言います。好材料の例としては、優良企業の買収や増配(*1)、リストラ策の発表等も該当します。これは、優良企業の買収やリストラを行うことで、今後の企業の収益性が向上し、株価の向上が見込まれるためです。ただし、一概にこのようなニュースが株価の向上に繋がるわけではないため、好材料の基準は明確ではありません。

    ニュースは、市場の開場時間に限らずいつ発表されるか分からないため、いつでも株価の変動に対応することができるPTSを活用することで翌日の開場前に取引を完了しておくことができます。つまり、好材料の際にはいち早く安値で購入し、悪材料の場合にはできるだけ高値で売却することが可能となります。

    (*1:前年比で配当金が増額されることです。)

    PTSランキングを参考にする

    PTSランキングとは、前日のPTS取引にて購入された銘柄や好材料が発表された銘柄を人気ランキング化したものです。同日中の夜間時間帯に行なわれた取引の結果となるため、朝9時からの取引所での取引にも影響がでる場合があります。

    前日の人気銘柄が分かることで、その日の株価変動を予測することができ、株価が上がりそうな銘柄を絞る際に役立ちます。ただし、ランキングだけから判断するのではなく、参考程度としておくことが大切です。

    参考:PTS ランキング (モーニングスター株式会社公式サイト)

    時間外取引の注意点

    時間外にをPTS取引を行うことで、いつでもリアルタイムな株式売買取引を行うことができ非常に便利ですが、注意すべき点もあります。以下より5点、PTS取引を始める前に知っておきたい注意点をお教えします。

    値動きが大きく初心者には不向き

    PTS取引に対応している証券会社が限定されているため、出されている注文総数が少なく、1注文によって大きく株価が変動してしまう可能性が高くなります。好材料や悪材料といったニュースによって、本来の値動き以上の価格変動が発生する場合があり、投資初心者に向いているとは言えません。

    注文時間が早いほうが優先

    同額の注文が出されていたい場合には、注文時間の早いほうが優先されることとなるため注意が必要です。最大限早く注文を出すことで有利に取引を進めることが可能となります。

    しかし、株価は日本国内のニュースや経済状況のみで決定するものではなく、海外からも影響を受けることとなります。そのため、取引のリスクを減らすために、注文前に海外のニュースや経済環境を確認してから翌朝に注文を出すことが大切です。

    取引の種類

    PTS取引は、現物取引に限って行うことができます。取引には現物取引と信用取引の2種類があり、現物取引は保有している範囲内で購入可能な金融商品を選択して、取引が成立した時点で金銭や有価証券等を受け渡す取引のことです。一方の信用取引は、有価証券等を購入する際に証券会社から借金をして購入する取引のことで、資産や現金を証券会社に担保として預ける必要があります。

    参考:現物取引(げんぶつとりひき) (SMBC日興証券株式会社公式サイト)
    参考:信用取引とは?(楽天証券株式会社公式サイト)

    注文方法

    PTS取引では指値(さしね)注文のみを行うことができ、成行(なりゆき)注文を行うことはできません。

    指値注文とは、売買したい価格を自身で指定して注文を出す方法です。一方の成行注文とは価格を指定せず、売買注文がでた際に、売り注文の際には最高値、買い注文の際には最安値で注文が即座に約定(*1)する取引方法のことです。

    (*1:取引注文が成立することです。)

    参考:指値注文(さしねちゅうもん) (野村證券株式会社公式サイト)
    参考:成行注文(なりゆきちゅうもん) (SMBC日興証券株式会社公式サイト)

    売買単位

    株式売買時にPTS取引を利用する場合は、株式発行会社が単元株数を定めている際には単元株の単位で取引を行うこととなります。株式発行会社が特に定めていない場合には、1株単位での取引となります。

    ただし、東京証券取引所において売買単位が10株未満で、基準価格が6,000円以下の銘柄については、PTSでは10株単位からの取引、もしくは銘柄によっては売買取引を行うことができないものがあるため注意が必要です。

    参考:売買単位 PTS取引 取引ルール(松井証券株式会社公式サイト)

    時間外注文

    時間外注文とは、市場の開場時間以外のタイミングで売買注文を出すことです。開場時間内に出された注文はその場でリアルタイムに注文が処理されて取引が完了しますが、取引時間外の注文はその場で実際に取引は行われず、翌営業日の注文として扱われます。

    注文自体はネット証券会社であれば基本的にどこでもほぼ24時間(*1)自由に行うことができます。

    (*1:システムメンテナンスの際など、注文することができない場合もあります。)

    参考:取引時間/注文受付時間(楽天証券株式会社公式サイト)

    初心者はまずは通常取引

    PTS取引は、市場の開場時間以外にも取引可能となるメリットがあり、非常に便利なサービスです。また、手数料についても取引所で売買取引を行う場合に比べて安く、好材料が出た際に得ることができる利益率が高くなります。しかし、1取引によって価格が大きく変動する可能性があることや、知らぬ間に差金決済を行ってしまう場合があり、投資初心者向けの取引方法とは言えません。

    まずは通常の株式売買取引を行ってから余裕のある範囲でPTS取引を行っていきましょう。

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