iDeCo(イデコ)の受け取り方法は、老齢給付金、障害給付金、死亡一時金、脱退一時金に分けられます。それぞれ受け取り手続きが異なり、また一括もしくは分割で受け取るかによって税金額も異なります。さらに、加入期間に応じて受け取り年齢も引き上げられるため、受け取りの際には注意しましょう。
iDeCo(イデコ)の積立金の受け取るタイミング
iDeCoで積み立てた資産は、老齢給付金、障害給付金、死亡一時金、脱退一時金の4つの方法で受け取ることができます。加入者のほとんどは、老齢給付金として資産を受け取ることになります。
老齢給付金
老齢給付金とは、受給開始年齢に達してから受け取る方法です。これまで積み立てた資産を一括もしくは分割で受け取ることができます。
原則60歳から受け取り開始
iDeCoの資産は、原則60歳から受け取ることができます。つまり、60歳になるまでは資産を引き出すことができません。
ただし、例外的に引き出すことがでる場合もあります。それは、加入者が障害を負った場合、死亡した場合、そしてiDeCoを脱退した場合です。その際は、障害給付金や死亡一時金、脱退一時金として資産を受け取ることになります。
受け取り開始可能年齢
iDeCoの受け取り開始可能年齢(受給開始年齢)は、60歳からです。ただし、iDeCoの加入期間に応じて年齢が引き上げられます。加入期間に応じた受給開始年齢は以下の通りです。
特に50代で加入する場合は、資産の受け取りが遅くなる可能性があるので注意しましょう。
加入期間 | 受給開始年齢 |
10年以上 | 60歳 |
8年以上10年未満 | 61歳 |
6年以上8年未満 | 62歳 |
4年以上6年未満 | 63歳 |
2年以上4年未満 | 64歳 |
1ヶ月以上2年未満 | 65歳 |
障害給付金
受給開始年齢である60歳になる前に資産を受け取ることもできます。それは、障害給付金制度です。障害給付金とは、iDeCoの加入者が障害を負った際にiDeCoの資産を引き出すことができる制度です。
障害給付金を受け取りは、障害が以下に該当する場合に限られます。なお、障害と認められた場合は、iDeCoの資産の全額を引き出すことができます。
死亡一時金
障害給付金のほかに例外的に資産を受け取れる場合があります。それは死亡一時金制度です。死亡一時金とは、iDeCoの加入者が死亡した際にiDeCoの資産を引き出すことができる制度です。
死亡一時金は死亡後に自動的に支払われるのではなく、遺族による請求手続きによって支給されます。請求手続きがない場合、運用が継続されてしまうため注意しましょう。また、請求期限は加入者の死亡後5年以内です。
iDeCo(イデコ)の加入者が死亡した場合、受取人はいくら受け取ることができる?
脱退一時金
加入者の障害や死亡のほかに、一定の条件を満たした場合には、iDeCoを脱退し、脱退一時金を受け取ることができます。脱退一時金を受け取る場合は、以下の条件をすべて満たす必要があります。
iDeCo(イデコ)老齢給付金の受け取り方法
iDeCoの資産は、一括、分割、もしくは一括と分割を併用して受け取ることができます。それぞれの受け取り方法によって、税金や控除額が異なるため注意しましょう。
3種類の受け取り方法
iDeCoの加入者は、資産の受け取りを以下の3つの方法から選びます。
- 一括(一時金)受け取り
- 分割(年金)受け取り
- 両者の組み合わせ
1.一括(一時金)受け取り
一括で受け取る場合は、一時金扱いとなります。iDeCoの資産は受け取りのタイミングで控除を利用して節税することができます。一括で受け取る場合は退職所得控除が適用されます。iDeCoの退職所得控除の計算方法は以下の通りです。
加入期間が20年以内 40万円×加入期間
加入期間が20年以上 800万円+70万円×(加入期間-20年)
2.分割(年金)受け取り
分割で受け取る場合は、年金扱いとなります。iDeCoの資産を年金として受け取るため、利用できる控除は公的年金等控除となります。
また、年金で受け取る場合は受け取り期間が設けられます。iDeCoの場合は、5年以上20年以内で受け取り、受け取り回数も年に1〜6回まで選ぶことができます。
65歳未満
年間の年金収入 | 公的年金等控除額 |
770万円〜 | 155万5千円 |
410万円〜 | 78万5千円 |
130万円 | 37万5千円 |
70万1円〜 | 70万円 |
〜70万円 | 課税されません |
65歳以上
年間の年金収入 | 公的年金等控除額 |
770万円〜 | 155万5千円 |
410万円〜 | 78万5千円 |
330万円〜 | 37万5千円 |
120万1円 | 120万円 |
〜120万円 | 課税されません |
3.両者の組み合わせ
一括と分割の両者を組み合わせて受け取る場合は、退職所得控除と公的年金等控除の両方を受けることができます。両者を併用することで、退職金の退職所得控除枠が残っている枠分だけ一括で受け取り、残りを年金として受け取ることができます。
一括受け取りの特徴
一括受け取りには、退職所得控除を利用できるというメリットがあります。その一方で、退職金が多い方には不利になる場合があります。
メリット
一括受け取りのメリットは、退職所得控除を利用できることです。ただし、退職所得控除の加入期間は、掛金を拠出している期間が該当します。運用指図者として運用のみ行なっていた期間は加入期間に含まれないため、計算する際に注意してください。
デメリット
一括受け取りのデメリットは、退職金が多い方は不利になることです。iDeCoの退職所得控除は、勤め先の退職金と合わせた控除枠となっています。つまり、退職金が多い方がiDeCoの資産を一括で受け取ってしまうと、控除枠を超えてしまい課税されることになります。退職金が多い場合は、一括での受け取りは避けましょう。
分割受け取りの特徴
分割受け取りには、公的年金等控除を利用できるというメリットがあります。その一方で、年金が多い方には不利になる場合があります。
メリット
分割受け取りのメリットは、公的年金等控除を利用できることです。通常年金の受け取りには税金が課されますが、控除枠内であれば非課税となります。iDeCoの公的年金等控除を利用することで、節税対策になります。
デメリット
分割受け取りのデメリットは、年金が多い方は不利になることです。iDeCoの公的年金等控除は、iDeCo以外の年金と合わせた控除枠となっっています。そのため、年金の受け取り額が多い方がiDeCoの資産を分割で受け取ってしまうと、控除枠を超えてしまい課税されることになります。年金が多い場合は、分割の受け取りを避けるようにしましょう。
また、iDeCoを受け取る際には、その都度手数料が発生します。受け取る回数が多ければ多いほど、手数料も徴収されるため注意しましょう。
iDeCo(イデコ)の受け取り額シミュレーション
iDeCo公式サイトや運営管理機関において、無料のシミュレーションツールを利用することができます。年齢、年収、掛金を入力すると、将来の受け取り金額や節税金額を確認することができます。実際に、いくつか具体例を挙げてシミュレーションしてみましょう。
iDeCo公式サイト かんたん税制優遇シミュレーション
JIS&T 節税メリットシミュレーション
会社員Aさん
会社員Aさんが、以下の条件でiDeCoに加入した場合です。60歳以降に受け取れる金額は、5,352,094円です。25年で節約できる税金は720,000円、年間にして28,800円となります。
年齢 35歳
年収 550万円
掛金 12,000円
利率 3%
加入期間 25年
公務員Bさん
公務員Bさんが、以下の条件でiDeCoに加入した場合です。60歳以降に受け取れる金額は、4,157,900円です。36年で節約できる税金は518,400円、年間にして14,400円となります。
年齢 24歳
年収 390万円
掛金 8,000円
利率 1%
加入期間 36年
自営業Cさん
自営業Cさんが、以下の条件でiDeCoに加入した場合です。60歳以降に受け取れる金額は、17,628,849円です。36年で節約できる税金は3,702,600円、年間にして217,800円となります。
年齢 43歳
年収 900万円
掛金 55,000円
利率 5%
加入期間 17年
老齢給付金の受け取り手続き
老齢給付金の受け取りは、以下の手順で行います。裁定結果では、支給もしくは不支給が伝えられます。支給が認められた場合は、指定口座に老齢給付金が振り込まれます。
- 記録関連運営管理期間に問い合わせ
- 裁定請求書類を提出
- 裁定結果の受け取り
- 支給開始
障害給付金、死亡一時金、脱退一時金の受け取り
障害給付金と死亡一時金の受け取り方法はそれぞれ異なります。万が一の時に備えて、手続方法を確認しておきましょう。
障害給付金
障害給付金は、老齢給付金と同様の手続きで受け取ります。また、受け取り期間中であっても70歳までに障害をおった場合も障害給付金を受け取ることができます。ただし、一定の障害状態であることと一定期間を経過した場合にのみ認められます。
死亡一時金
死亡一時金は、以下の手順で手続きします。運営管理機関に「加入者等死亡届」を提出する際、死亡診断書または脂肪を明らかにすることができる書類の提出も求められます。また、死亡一時金は一括のみの受け取りとなります。
- 運営管理機関に死亡届を提出
- 記録関連運営管理機関に請求書を提出
脱退一時金
脱退一時金を受け取る場合は、記録関連運営管理機関に「脱退一時金裁定請求書」を提出します。ただし、企業型確定拠出年金の加入資格を喪失した方、自動移換された方は運営管理機関に「脱退一時金裁定請求書兼個人別管理資産移換依頼書(連合会用)」を提出してください。
ご自身の状況に応じた選択を
今回はiDeCoの受け取り方法について解説しました。iDeCoの資産は、原則60歳以降に老齢給付金として受け取ります。加入者によって一括もしくは分割の受け取り方法を選ぶことができ、それぞれ退職所得控除や公的年金控除を利用することができます。ただし、これらの控除枠は企業の退職金やiDeCo以外の年金を併せた控除枠となっています。
また、老齢給付金以外にも、障害給付金、死亡一時金、脱退一時金として例外的に資産を受け取ることができます。ただし、これらの給付金や一時金は老齢給付金と異なる手続きのため、必ず手続き方法を確認しましょう。