iDeCoで税金を還付するためには、年末調整の手続きが必要不可欠です。今回は、iDeCoにおける年末調整の書き方、注意点、還付額について解説します。万が一、年末調整を忘れた場合は、確定申告で取り戻すこともできます。実際に年末調整を行う方は、手元に小規模企業共済等掛金払込証明書があるか確認しましょう。
iDeCo(イデコ)の年末調整のやり方
こちらでは、年末調整の対象者、手順、注意点について解説します。後半では、確定申告についても解説しているので、そもそも年末調整がない方は確認するようにしましょう。
年末調整とは
年末調整とは、1年間の給与にかかる所得税を算出、調整する手続きです。所得税は毎月の給与から差し引かれています。しかし、控除などは考慮されておらず、概算で計算されています。そこで、年末調整で控除を適用した所得税を精算し、支払い過ぎている場合は12月もしくは1月の給与で還付されます。
iDeCoの場合、掛金の全額が所得控除となります。年末調整で、iDeCoの所得控除を適用した所得税を算出し、節約できた分を取り戻すことができます。iDeCoで節税をするためには、必ず年末調整を行いましょう。
iDeCo(イデコ)の3つの節税メリット
iDeCoに加入すると、3つの節税メリットを受けることができます。
- 掛金が全額所得控除
- 運用益・利息が非課税
- 受け取り時に税制優遇
1.掛金が全額所得控除
iDeCoに拠出した掛金は、全額が所得控除の対象となります。iDeCoのほかに、掛金が所得控除になる年金として個人年金も挙げられます。ただし、個人年金の場合、掛金が80,000円以上になると控除額が一律40,000円になります。しかし、iDeCoの場合は所得控除に上限額が設けられていません。
2.運用益・利息が非課税
iDeCoの運用益と利息には税金がかかりません。通常、株式投資や信託投資の運用益には20.315%の税金が課せられます。しかし、iDeCoの信託投資で発生した運用益には、税金が課されません。さらに、iDeCoの定期預金の利息にも課税されません。
3.受け取り時に税制優遇
iDeCoで運用した資産を受け取る際、節税することができます。iDeCoの資産は、一括もしくは分割の受け取りを選択します。一括の場合は退職所得控除が適用され、分割の場合は公的年金等控除が適用されます。つまり、一括でも分割でも所得控除対象となるため、受け取りのタイミングで税金対策ができます。
iDeCo(イデコ)での年末調整対象者
iDeCoは、個人払込を選んだ方が年末調整を行わなけばいけません。iDeCoの支払い方法には、事業主払込と個人払込があります。事業主払込は給与天引きのため、企業が源泉徴収で税金を清算します。つまり、事業主払込を選択した方は年末調整が不要です。個人払込を選んでいる方は、必ず年末調整を行いましょう。
年末調整の手順
年末調整は、以下の手順で行います。
- 小規模企業共済等掛金払込証明書を受け取る
- 必要書類を記入
- 書類を勤務先に提出
1.小規模企業共済等掛金払込証明書を受け取る
iDeCoの掛金を支払うと、10月以降に国民年金基金連合会から小規模企業共済等掛金払込証明書が郵送されます。小規模企業共済等掛金払込証明書には、掛金の支払い内容が記載されており、年末調整では必要になるため、必ず保管しましょう。
2.必要書類を記入
年末調整では、掛金の金額を記入します。「給与所得者の保険料控除申告書」を受け取ったら、右下の小規模企業共済等掛金控除の欄があるので、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」に金額を記入してください。記入する金額は、1〜12月の掛金の総額です。
3.書類を勤務先に提出
必要書類に記入が完了したら、書類と小規模企業共済等掛金払込証明書を添付して勤務先に提出してください。節税できた所得税は12月もしくは1月に、住民税は翌年の6月以降に反映されます。
年末調整の注意点
年末調整の際は、以下の2点に注意してください。
- 掛金の初回拠出が10月以降の場合
- 年末調整を忘れた場合
1.掛金の初回拠出が10月以降の場合
10月以降に初回の掛金を支払った場合は、年末調整ではなく確定申告で税金を清算してください。10月以降の初回拠出では、小規模企業共済等掛金払込証明書の発行が年末調整に間に合いません。もし、10月以降に拠出した方で、確定申告の際に小規模企業共済等掛金払込証明書が手元にない場合は、支払いが確認できる通帳のコピーで構いません。
2.年末調整を忘れた場合
年末調整を忘れた方は、確定申告を行なってください。年末調整は1月31日が最終締め切りです。もし、この締め切りを超えた場合は、確定申告を3月15日までに行いましょう。年末調整や確定申告を行わないと、節約した税金は戻ってきません。
年末調整でいくら戻ってくる?
年末調整の還付額は、年収や掛金額などで異なってきます。例えば、Aさんの場合は年間で24,200円の節税効果が、Bさんの場合は年間で54,800円の節税効果があります。節税効果は、各金融機関が提供しているシミュレーションツールで調べることができます。一度、ご自身の年収や掛金ではいくら戻るのかを確認してみましょう。
Aさん
年齢 28歳
掛金 10,000円
収入 300万円
Bさん
年齢 40歳
掛金 15,000円
収入 650万円
年末調整ではなく確定申告が必要な人
上述した場合以外にも確定申告が必要な方がいます。それは以下に該当する方です。
- 自営業の人
- 年収103万円を超える専業主婦(夫)
1.自営業の人
自営業の方は、企業に勤めていないため、そもそも年末調整がありません。年末調整がない場合は、確定申告で税金の調整を行いましょう。
2.年収103万円を超える専業主婦(夫)
年収103万円を超える専業主婦(夫)の方は確定申告が必要です。ただし、年収103万円以下の場合は、そもそも所得税がかからないため、確定申告は不要です。
ご自身の状況に応じて正しく節税しましょう
今回はiDeCoにおける年末調整の手続きについて解説しました。
iDeCoは、掛金が全額所得控除や運用益が非課税など、節税効果の大きい年金制度です。ただし、節税するためには年末調整の手続きが必要です。会社員や公務員の方は必ず年末調整の手続きを行いましょう。万が一、年末調整を忘れた場合は確定申告でも調整が可能です。また、年末調整を忘れた方以外に、掛金の支払いが10月以降の方、自営業の方、個人払込の方なども確定申告を行いましょう。