iDeCoの加入者が死亡した場合、遺族は死亡一時金としてiDeCoの資産全額を受け取ることができます。ただし、この死亡一時金の受け取りには注意が必要です。1点は受取人による請求手続きが必要なことと、2点めに受け取りには期限があることです。さらに、死亡一時金の受取人には優先順位があります。iDeCoの死亡一時金を受け取る場合は、手続き方法や注意点を把握しておきましょう。
iDeCo(イデコ)運用中に死亡したらどうする?
iDeCoの加入者が死亡した場合、死亡一時金としてiDeCoの資産を受け取ることができます。ただし、受け取る際にはいくつかの条件を満たす必要があります。
死亡時のiDeCo(イデコ)掛金の返金
iDeCoの加入者が死亡した時、運用管理機関から死亡一時金として資産を引き出すこととなります。
死亡一時金
死亡一時金とは、一時金であって年金ではありません。そのため、一括で受け取る必要があります。さらに、この死亡一時金は、請求があって初めて支給されます。加入者が死亡した際、自動的に支払われるものではないことに注意しましょう。
また、加入者のほかに、運用指図者や自動移換者も死亡一時金を受け取ることができます。
いくら返金される?
死亡一時金で受け取る金額は、iDeCoで運用している全額です。ただし、申請後に運営管理機関が死亡一時金の処理を行なった時点の資産額です。申請が遅れれば遅れるほど、資産も変動するため、遺族の方は申請手続きを忘れずに行いましょう。
死亡者の年齢は不問
死亡した年齢に関わらず、遺族は死亡一時金を受け取ることができます。遺族の年齢も問われません。ただし、死亡した際に、iDeCoの資産残高が0円の場合は死亡一時金は支給されません。
死亡一時金の受取人
死亡一時金の受け取りには、優先順位があります。加入者、運用指図者、自動移換者は、万が一の時に備えて、受取人についても把握しておきましょう。
優先順位
受取人の優先順位は以下の通りです。
優先順位 | 遺族 |
1位 | 配偶者 |
2位 | 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって死亡した者の死亡の当時主としてその収入によって生計を維持していたもの |
3位 | 第2位に掲げる者のほか、死亡した者の死亡当時主としてその収入によって生計を維持していた親族 |
4位 | 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって第2位に該当しない者 |
受取人指定
iDeCoの加入者、運用指図者、自動移換者は、万が一に備えて死亡一時金の受取人を指定することができます。その際は、死亡一時金受取人指定書への記入が必要です。死亡一時金受取人指定書は、運用管理機関から取り寄せます。
遺族による請求手続きが必要
前述しましたが、iDeCoの死亡一時金を受け取る場合は、請求手続きが必要です。請求手続きを行わないと、運用を継続していることになるため、遺族の方は必ず手続きを行いましょう。手続きは以下の手順で行います。
- iDeCoの運用管理機関(金融機関)に資料請求
- 必要書類を提出
1.iDeCo(イデコ)の運用管理機関(金融機関)に資料請求
まずは、加入者が利用している運用管理機関(金融機関)に問い合わせ、「加入者等死亡届」を資料請求しましょう。手続き方法がわからない方は、できるだけ電話で問い合わせするようにしましょう。
2.必要書類を提出
届いた「加入者等死亡届」に記入し、運用管理機関(金融機関)に提出します。この際、死亡を明らかにすることができる書類の提出も求められます。
さらに、記録関連運営管理機関に「死亡一時金裁定請求書」を提出する必要があります。手続き方法の詳細は、記録関連運営管理機関にお問い合わせください。
請求期限
死亡一時金を請求できる期間は、加入者、運用指図者、自動移換者の死亡後5年以内です。この期間を過ぎた場合、遺族は死亡一時金の請求、受け取りができません。
自動移換者の場合
自動移換者が死亡した場合、「死亡一時金裁定請求書」は運営管理機関(金融機関)に提出します。「死亡一時金裁定請求書」の資料請求は、各運営管理機関(金融機関)に行いましょう。
申請から振込みまでは時間がかかる
遺族の方が、死亡一時金を申請してから受け取るまでには最低でも1ヶ月程度は要します。申請後、運営管理機関が資産の審査や売却手続きをする必要があるためです。死亡一時金を申請したら、すぐに受け取れるというわけではないことを覚えておきましょう。
死亡一時金にかかる手数料
死亡一時金を受け取る際には、給付事務手数料432円が資産から差し引かれます。さらに、加入者の死亡後も掛金の拠出が継続されてた場合、還付手続きが行われます。この還付手続きの際にも1,461円の手数料が徴収されます。
死亡一時金にかかる相続税
iDeCoの死亡一時金は、相続税の対象です。支給のタイミングで税額は異なります。
死亡日から3年以内に支給が決定した場合
3年以内に支給が決定した場合は、相続財産と合算して相続税の計算が行われます。なお、iDeCoの死亡一時金には、非課税枠があります。非課税枠の計算式は以下の通りです。
500万円×相続人の数
例)相続人 1人
500万円×1=500万円(非課税枠)
死亡日から3年を超えて5年以内に支給が決定した場合
死亡日から3年以上5年以内に支給が決定した場合、iDeCoの一時金は一時所得扱いとなります。一時所得の場合、非課税枠は50万円となります。
死亡日から5年以上経過後に支給が決定した場合
iDeCoの加入者の死亡後、5年以上経過した場合は死亡一時金を請求することができません。そのため、iDeCoの資産は相続財産扱いとなり、相続財産と同様の税金が課されます。
死亡一時金が支給されないケース
iDeCoの死亡一時金が支給されない場合もあります。それは、以下の3つのケースです。
その他理解しておくべきこと
iDeCoの死亡一時金に関して、遺族年金や企業型確定拠出年金、または障害状態についても理解しておきましょう。
遺族年金と死亡一時金の違い
遺族年金とは、公的年金加入者が死亡した際に受け取ることができる年金です。死亡一時金は一括での受け取りですが、遺族年金は年金扱いのため分割で受け取ることができます。
企業型確定拠出年金との違い
iDeCoと企業型確定拠出年金は加入条件が異なります。企業型確定拠出年金とは、企業が整備する年金です。そのため、企業型確定拠出年金に加入できるのはその企業に勤めている会社員に限られます。
障害状態になった場合
障害状態になった場合は、死亡一時金ではなく障害給付金を受け取ることができます。障害給付金も受給の際には請求手続きが必要であり、iDeCoの資産の全額を受け取ることができます。
万が一のための備えが大切
今回はiDeCoの死亡一時金について解説しました。iDeCoの加入者、運用指図者、自動移換者が死亡した場合、遺族はiDeCoの資産を死亡一時金として受け取ることができます。ただし、受け取る際にはいくつか注意が必要です。
まず、死亡一時金には請求手続きが必要です。死亡後に自動的に支給されるのではなく、請求があって支給が開始されます。次に、死亡一時金には請求期限があります。死亡後5年以上が経過すると、死亡一時金として受け取ることができません。次に、受取人には優先順位があります。加入者は、死亡した場合に受取人を指定したい場合は、死亡一時金受取人指定書の手続きを行いましょう。