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NISA(ニーサ)・積立NISAと源泉徴収。特定口座の選び方を解説

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税制優遇制度であるNISA(ニーサ)・つみたてNISAは、投資の利益が非課税となるメリットがある制度です。NISA口座を証券口座にて開設する際には通常証券口座を保有しておく必要があり、投資家は源泉徴収の有無によって異なる口座区分を自由に選択することができます。そこで今回は、NISAと源泉徴収の関係、通常証券口座の選び方やNISA口座と通常証券口座の併用について解説します。

NISAと源泉徴収に関する数宇が書かれた紙の画像

NISA(ニーサ)・つみたてNISAと源泉徴収の関係は?

2014年から開始されたNISA(ニーサ)は、20歳以上の日本居住者を対象に投資の利益を非課税にて受け取ることができる税制優遇制度です。通常、投資の利益には基本的に所得税や住民税が課税されますが、NISA口座での資産運用時には一切かからなくなります。では、このNISA・積立NISAと事前に税金を差し引く源泉徴収の手続きはどのような関係なのでしょうか。

NISA(ニーサ)口座はそもそも非課税

源泉徴収とは、サラリーマンなどの給与を貰う場合に事前に税金(*1)が引かれることです。源泉徴収によって税金が引かれた状態で給与を受け取ることになります。源泉徴収は給与に対して通常課税される所得税と住民税20.315%(*2)が引かれることになりますが、NISAや積立NISA口座から行った投資の利益についてはそもそも税金がかかりません。そのため、NISA口座での資産運用益に対して源泉徴収が行なわれることはなく、NISA制度と源泉徴収は無関係となります。

(*1:概算にて差し引かれます。)
(:2:所得税15.315%、住民税5%。所得税には「復興特別所得税」として0.315%が含まれています。)

参考:源泉徴収義務者とは(国税庁公式サイト)
参考:NISAの概要(金融庁公式サイト)

課税口座をどうするか

証券会社にてNISAもしくは積立NISA口座を開設する際には、既に通常証券口座を開設・保有しておく必要があります。この通常証券口座には3種類があり、投資家が自由に開設証券口座を選択することが可能です。

  • 一般口座
  • 特定口座(源泉徴収なし)
  • 特定口座(源泉徴収あり)
  • この3種類のなかからどのようにして通常証券口座の開設区分を決めればよいのでしょうか。以下よりそれぞれの特徴と性格をお伝えしますので、考慮したうえで自身に最適な証券口座を開設していきましょう。

    特定口座と一般口座

    上述の通り、通常証券口座には3種類あり、これは年末に納税のために行なわれる確定申告(*1)手続きの手間の違いから分類されています。

    一般口座とは、1月1日から12月31日の1年間で一般口座内にて保有・管理していた株式や投資信託の運用益と損失を算出し、その年の税額を自身で確定、納税までの確定申告の手続きを投資家自身が行う必要のある証券口座です。ある1年間における投資の売買取引を全て記録しておく必要があり、非常に手間がかかるデメリットがあります。

    一方の特定口座は確定申告の手間が一般口座に比べて軽減されている証券口座で、ある1年間の当該証券口座における売買取引の記録からその年の税額を証券会社が投資家に代わって計算してくれる証券口座です。

    (*1:国民が1月1日から12月31日までの1年間の所得額を計算し、納税の必要がある税額を算出する手続きのことです。)

    参考:一般口座(SMBC日興証券公式サイト)

    特定口座の源泉徴収有り無し

    特定口座は源泉徴収(*1)の有無によってさらに2種類に分かれます。

    「源泉徴収なし」の特定口座では、証券会社が算出してくれた税額を年末に投資家自身で納税する必要がありますが、「源泉徴収あり」の特定口座では、運用益が自身の証券口座に振り込まれる際に源泉徴収にて税金が引かれるため、年末に確定申告の手間がありません。

    (*1:所得が納税者に支払われるより前に、事前に所得税を差引いておく納税方法です。)

    参考:特定口座(SMBC日興証券公式サイト)
    参考:源泉徴収が必要な報酬・料金等とは(国税庁公式サイト)

    源泉徴収ありのメリット・デメリット

    源泉徴収有りの特定口座を選択することで、なにかメリットがあるのでしょうか。また、反対に源泉徴収有りを選択することで生じるデメリットはあるのでしょうか。ここからは源泉徴収有りの特定口座のメリット・デメリットを説明します。

    確定申告が不要

    源泉徴収有りの特定口座では、資産運用益の受取り時に源泉徴収にて事前に税金が差し引かれることになります。そのため、年末の時点で既に納税が完了していることになります。改めて確定申告を行って納税手続きを行う必要がないため、投資家にとって手続きの手間が減るメリットがあります。

    さらに、年末時点で既に納税が完了していることから、会社に書類を提出するなどの税金に関する手続きを行う心配がありません。会社に投資利益を知られる危険性がなくなります。

    20万円以下の利益でも課税されてしまう

    投資の利益に対して課税される所得税等は、税金控除として給与以外の収入が年間20万円以内であれば課税されません。(*1)そのため、源泉徴収有りの特定口座を利用した年間の投資利益が20万円以下であった場合、本来税金控除の対象となるはずの利益に対して源泉徴収によって税金が引かれることになり、税金控除を受けることができないデメリット潜んでいます。

    (*1:サラリーマン等の給与所得者において。)

    参考:確定申告が必要な方(国税庁公式サイト)

    源泉徴収なしのメリット・デメリット

    源泉徴収によって税金控除の対象であるにも関わらず課税されてしまう可能性のある源泉徴収あり特定口座に対して、源泉徴収なしの特定口座ではどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

    20万円以下の利益なら非課税

    平成30年の税制により、サラリーマン等の通常給与所得者は、給与以外の年間収入額が20万円以下であれば税金控除の対象として課税されません。納税手続きを自身で行うことができる源泉徴収なしの特定口座では、自身の年間の投資利益に応じて確実な納税手続きを踏むことができるメリットがあります。

    参考:給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁公式サイト)

    確定申告等の手間

    源泉徴収なしの特定口座は、運用益を受け取る際に税金が引かれず、年末に投資家自身で確定申告の手続きを行う必要があり、手続きの手間がかかるデメリットがあります。

    配当金と分配金

    配当金とは、保有株式の発行企業が利益の一部を投資家に対して還元することで、分配された利益のことを言います。一方の分配金は、投資信託(*1)における運用益が投資家へ還元される仕組みで、分配金の場合は資産の元手から引かれて支払われます。

    (*1:複数の投資家から投資資金を集め、株式や債権、不動産等の様々な資産を専門家が投資家に代わって運用を行う金融商品のことです。ファンドとも言われます。)

    参考:配当金(日本証券業協会公式サイト)
    参考:投資信託(ファンド)の分配金とは?(ライブスター証券公式サイト)

    配当金の受け取り方法

    株式の配当金受取方法には3種類あり、投資家が自由に選択して設定することができますが、受取方法の選択時に注意が必要になります。

  • 株式数比例配分方式:証券口座での受取り
  • 配当金領収証方式:郵便局にて直接受取り
  • 登録配当金受領口座方式・個別銘柄指定方式:指定銀行口座での受取り
  • 受取方法の3種類のうち、証券口座での受取方法である「株式数比例配分方式」を選択した場合にのみ、NISAの非課税適用を受けて配当金を受け取ることができます。その他2種類を選択して配当金を受取った場合には、既に源泉徴収にて税金が引かれた状態で配当金を受け取ることになります。また、源泉徴収にて配当金から引かれた税金は、確定申告を行っても取り戻すことができません。

    最大限非課税メリットを享受したい場合には、早目に自身の配当金受取方法を確認し設定することが大切です。ただし、配当金受取方法は自身のNISA口座も含めた証券口座のなかの1口座でも受取方法を変更すると、全証券口座にて適用されることになる点も注意が必要です。

    参考:NISA口座における上場株式の配当金等受取方式に関する注意事項(日本証券業協会公式サイト)

    分配金の種類と課税

    投資信託の運用益が決算日に支払われる可能性のある(*1)分配金は2種類に分かれており、配当金に比べて仕組みが複雑となっています。

  • 普通分配金
  • 普通分配金とは、投資信託の運用によって得られた購入金額を上回った利益や売却益の分配金のことです。

  • 特別分配金
  • 投資信託の原資(*2)から支払われる分配金のことです。基本的に課税されません。

    分配金は基本的に投資信託の原資から支払われるため、分配金支払いが行なわれた場合には投資信託自体の資産価値が減少することになります。

    分配金は、指定した金融機関口座から受け取る「分配金受取り」、自動的に同じ投資信託を再購入する「分配金再投資」、「無分配」の3コースがありますが、無分配以外は普通分配金に対して20.315%が課税されます。そこで、NISA口座を利用して投資信託を購入することで、分配金に対して一切税金がかからなくなるメリットがあります。

    (*1:決算日後に確実に支払われるわけではなく、今後の運用を考慮したうえで支払われないことがあります。)
    (*2:投資信託運用の運用元本のことです。)

    参考:「分配金の仕組み」について 金融商品や取引の特徴やリスク(日本証券業協会)

    特定口座とNISA口座の併用時

    ここまで、通常証券口座の特定口座のメリット・デメリット、NISA制度において非課税対象である配当金と分配金について解説しました。ここからはその特定口座とNISA口座を併用して資産運用を行う際に注意したい点を2点お伝えします。NISA口座におけるデメリットとして投資家が負担を背負う可能性がある大きなポイントですので、きちんと理解しておきましょう。

    損益通算ができない

    損益通算とは、複数証券口座からある1年間に行った投資の利益と損失を合算し、その年の利益・損失を確定させることです。合算することである証券口座の損失を他証券口座の利益によって相殺することが可能となり、投資家にとってメリットがあります。

    しかし、この損益通算はNISA口座では行うことができません。NISA口座から行なった資産運用で損失が生じた場合にはそのまま投資家の赤字となります。

    参考:損益通算(国税庁公式サイト)

    繰越控除ができない

    繰越控除とは、ある1年間においてNISA口座で行った投資から発生した損失を翌年に持ち越すことができる制度です。損失を繰り越すことで、翌年の資産運用益から前年の損失分を支払うことができます。しかし、この繰越控除も損益通算と同様にNISA口座では行うことができず、投資家が損失分をそのまま負担することになります。

    NISA口座では損益通算と繰越控除という、投資の損失発生時の投資家に対する救済措置を講じることができず、NISA口座での資産運用によって損失が生じた場合には投資家の負担が非常に大きくなります。

    参考:損失の繰越控除(SMBC日興証券公式サイト)

    源泉徴収有り無しのおすすめ

    前半部で源泉徴収あり・なしの特定口座について解説しましたが、実際にNISA口座を利用して投資を行う際にはどちらを選択することが、より効率的な資産運用に繋がるのでしょうか。ここからは、NISA口座と併用する際の特定口座について投資スタイルや投資家自身の状況の異なる2モデルに応じて最適な種類をお教えします。

    これからNISA口座を開設して非課税メリットを享受しながら効果的に投資・資産運用を行いたい方は参考にしてみてください。

    20万円以下の利益の場合や、自身で確定申告をする場合

    通常のサラリーマンの場合、所得税などは給与以外の収入が年間で20万円以下であれば税金控除の対象となり、課税されません。(*1)源泉徴収ありの特定口座では、資産運用益が振り込まれる度に自動的に源泉徴収され税金が引かれます。そのため、年間の資産運用益が20万円以下で源泉徴収ありの特定口座を利用している場合、本来納税が不要な利益についても自動的に源泉徴収にて税金が引かれてしまうことになります。

    年間の投資利益が20万円に到達しそうにない場合は、源泉徴収なしの特定口座を選択しておくことで不要な所得税を支払う可能性がなくなります。ただし、税金控除の対象は所得税のみで、株式投資などによる利益には他に住民税がかかるため、年間の投資利益が20万円以下で源泉徴収なしの特定口座を利用していた場合にも、投資家自身で住民税の納税手続きを行う必要があります。また、投資家自身で確定申告を行いたい場合には源泉徴収なしの特定口座を選択する必要があります。

    (*1:投資による利益額が年間で20万円を超える場合には基本的に確定申告を行い、納税の必要があります。)

    参考:給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁公式サイト)

    20万円以上の利益で、手間を省きたい場合

    源泉徴収ありの特定口座では自動的に税金が源泉徴収されます。上述のような税金控除の対象にならない場合には、源泉徴収ありの特定口座を選択することで手続きの手間が省け年末の投資家の負担が軽減されます。

    源泉徴収の有り無しの変更

    ここまで特定口座の源泉徴収あり・なしの2種類について解説しました。NISA口座開設の前に通常証券口座を保有しておく必要があることから、特定口座のどちらか一方の区分にて証券口座を開設した後に、自身の投資スタイルの変化などによって納税区分の変更を行いたくなる場合も少なくありません。

    このような場合に、投資家は一定条件に基づいて特定口座の源泉徴収の有無を自由に変更することができます。「源泉徴収ありから源泉徴収なし」の変更と、反対に「源泉徴収なしからあり」への変更のそれぞれについて説明します。

    ありからなしへの変更

    特定口座の納税区分変更を行いたい年に特定口座内で株式売却や投資信託の解約が行なわれていない場合には配当金等の受取があったかどうかで、その年の区分変更が可能か、翌年分の取扱いとなるかが異なってきます。

  • 株式売却・投資信託解約なしの場合
  • 配当金受取の有無によってその年の変更可否が違います。

    特定口座の取引状況 区分変更について
    配当金等受取なし その年に変更可能
    配当金受取あり 翌年の変更

    特定口座の納税区分を変更したい年に、既に特定口座にて株式売却や投資信託の解約が行なわれていた場合には、区分変更が適用されるのは翌年となります。つまり、基本的に変更したい年に特定口座にてなにか取引があると特定口座の納税区分変更手続きは翌年の受付となります。

    参考:特定口座開設・変更・廃止方法 よくある質問(SBI証券公式サイト)

    なしからありへの変更

    源泉徴収なしからありへの変更時は、株式売却や投資信託の解約等の取引の有無によって翌年の受付となるかどうかが変わります。

    特定口座の取引状況 区分変更について
    株式売却・投資信託解約なし その年に変更可能
    株式売却・投資信託解約あり 翌年の変更

    株式売却・投資信託解約等の取引が、納税区分を変更したい年に行なわれていなければ、源泉徴収なしからありへその年に変更することができます。

    参考:税金・特定口座 よくある質問(楽天証券公式サイト)

    NISA(ニーサ)口座に源泉徴収はなし、併設課税口座の判断が重要

    NISA(ニーサ)は資産運用益が非課税となる税制優遇制度であるため、利益支払い時に事前に税金を差し引く源泉徴収は適用されず無関係です。しかし、NISA口座開設時に保有が必須な通常証券口座は源泉徴収の有無によって区分が分けられており、それぞれを利用することでメリットやデメリットが異なります。投資利益額によっては納税が不要な利益に対しても課税されるリスクがあります。

    投資家は自身の通常証券口座区分を自由に選択することができ、途中で納税区分の変更を行うことが可能です。しかし、変更手続きの手間やその後の投資によっては投資家の負担が増えることも考えられ、自身の投資スタイルや年間で発生し得る利益額を考慮したうえで開設証券口座の納税区分を選択することが大切です。

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