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夜間時間のリアルタイム株取引とPTS取引を解説。デメリットとは?

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株の夜間取引とPTS取引について解説します。夜間にPTS取引を行うことのメリットと、反対にデメリットと注意点、さらに夜間取引の活用方法もお教えします。実際にPTS取引を行うことができる証券会社もご紹介しますので、夜間取引についてきちんと理解して自身の投資に役立てていきましょう。

株の夜間取引を行う時間帯の外の様子の画像

株式投資における夜間取引

株式投資の夜間取引について解説します。市場の開場時間帯にリアルタイムな株式売買取引を行うことができない投資家にとっては非常に魅力的な制度です。きちんと仕組みを理解して自身の投資に活用していきましょう。

夜間取引とは

夜間取引とは、夜間時間帯に株式の売買取引を行うことができる制度のことです。株式の売買取引は市場の開場時間に証券取引所を通して行うこととなります。日本の証券取引所の取引時間は、昼休憩を挟んで前場と後場に分かれています。

  • 前場:9:00〜11:30
  • 後場:12:30〜15:00(*1)
  • 土日・祝日は休みのため、サラリーマンなど日中に仕事があるような投資家の場合には、基本的にリアルタイムな株式売買取引を行うことができません。しかし現代の技術の進歩によって、このような投資家のために証券取引所の開場時間以外の売買取引、夜間取引を行うことができるようになりました。

    (*1:東京証券取引所の取引時間です。名古屋・札幌・福岡の取引所では15:30まで取引を行うことができます。)

    参考:売買立会時(立会時間) (日本取引所グループ公式サイト)
    参考:取引の種類と取引時間(名古屋証券取引所公式サイト)
    参考:売買立会(取引)時間 札幌証券取引所について (札幌証券取引所公式サイト)
    参考:取引時間 福岡証券取引所紹介 (福岡証券取引所公式サイト)

    PTS取引

    PTS取引の概要と取引時間を解説します。サラリーマン投資家の方など、平日の日中に取引できない方にとってメリットの多い取引制度です。仕組みを理解して自身の投資に活用してみましょう。

    PTS取引とは

    PTS取引とは、夜間取引を行うことができるシステム「Proprietary Trading System」(私設取引システム)を利用した取引のことを指します。PTS取引市場では、夜間時間帯だけでなく証券取引所の開場時間も取引を行うことが可能となっています。そのため、PTS取引サービスを利用する投資家は市場の開場時間帯には市場を自由に選択して取引を行うことができます。このPTS取引の取引可能時間は、デイタイムとナイトタイムに分かれています。

  • デイタイム:8:20〜16:00
  • ナイトタイム:17:00〜23:59
  • この時間はSBI証券からPTS取引サービスを利用した場合です。証券会社によっては、PTS取引の取引可能時間が異なるため、自身の証券会社の情報をきちんと確認しておくことが大切です。

    参考:SBI PTS(SBI証券株式会社公式サイト)

    SBIジャパンネクスト証券のシステム

    現在、日本でPTS取引を行うことができるシステムはSBIジャパンネクスト証券株式会社が運営する「ジャパンネクストPTS」のみとなっています。PTS取引はSBI証券・楽天証券・松井証券のいずれかで証券口座を持つ投資家であれば、誰でも利用することができます。

    参考:PTS TECHNOLOGY (SBIジャパンネクスト証券株式会社公式サイト)

    PTS夜間取引のメリット

    PTS取引サービスを利用することのメリットを説明します。市場の開場時間以外に株式売買取引を行うことが可能となることで投資家にどのようなメリットが発生するのでしょうか。

    日中忙しい会社員に便利

    PTS取引を利用することで、証券取引所の開場時間帯に仕事で株式売買取引を行うことができない投資家でも、リアルタイム取引を行うことが可能となるメリットがあります。

    通常の証券取引所は平日の日中しか開いておらず、基本的に平日に仕事がある会社員の投資家は、ほとんどリアルタイムな株式売買取引を行うことができません。そのため、PTS取引によって株式の売買取引可能時間帯が拡大されることで、平日の日中以外の時間帯でも株価の変動に応じて株式の売買取引を行うことができるようになります。

    取引所の最良気配よりも有利な取引チャンス

    PTS取引のメリットの2点目は、通常の証券取引所で売買取引を行うよりもお得に取引できる可能性があることです。

    PTS取引サービスは、通常の証券取引所が開場している時間帯でも利用することができます。そのため、例えば銘柄Aを買付けようと思った際に、株式市場の価格よりもPTS取引所での株価の方が安くなっている場合に、PTS市場で買い付けることで通常の証券取引所にて銘柄Aを購入するよりもお得に取引を行うことができます。つまり、PTS取引制度を利用することで、同時刻の証券取引所での株価とPTS市場の株価をそれぞれ見比べて、お得な方を選択して売買取引を行うことが可能となります。

    手数料が安い

    PTS取引では、通常の証券取引所よりも安い手数料で売買取引を行うことができます。SBI証券を例に、5万円以内の一度の取引にかかる手数料を比較してみましょう。(*1)

    1. 通常の証券取引所:54円(税込)
    2. PTS取引:50円(税込)

    一取引ごとの違いは税込で4円の差ですが、1,000回取引を行った場合には4,000円の差が生じるなど、結果的に大きな金額となります。同額の取引を行う際には、PTS取引を利用する方がお得になります。

    (*1:現物取引の一度の注文で手数料が発生するスタンダードプランとPTS取引の手数料を比較しています。)

    参考:「朝8:20~」「夜17:00~23:59まで」取引できるのがSBI証券のPTS取引! (SBI証券株式会社公式サイト)

    決算発表後の当日に取引できる

    PTS取引を利用することで、通常証券市場が閉場する15時以降の時間帯に発表された決算に対しても当日中に対応することができるメリットがあります。

    株価は、決算の結果に影響されて変動します。これは、株式会社では業績向上によって利益額が上がることで株主に還元するお金が増え、企業価値が高まり、それに伴って株価が上がる可能性が高まるなどの要因が考えられます。反対に業績の悪化で株価が下がることも考えられるなど、決算の時期は株価が動くこととなります。そのため、通常の売買取引では翌日の取引として扱われてしまう時間にPTS取引を利用することで、決算発表後にその後の値動きを予想してすぐに対応することが可能となります。

    PTS夜間取引のデメリット

    PTS取引のサービスを利用することで投資家が被る可能性があるデメリットを2点、お教えします。株式売買取引が可能な時間帯が拡大し、手数料の安さも非常に魅力的ですが、一方でどのようなデメリットがあるのでしょうか。PTS取引を行う際にデメリットに該当してしまうことで、法令違反となる可能性があり、きちんと理解してからPTS取引制度を活用することが大切です。

    差金決済

    PTS取引のサービスを利用することで、現物取引の際に法令で禁止されている「差金決済(さきんけっさい)」に該当してしまう可能性があるデメリットがあります。差金決済とは、1日のなかで複数回、同じ投資資金を使用して売買取引を行うことです。

    例えば、デイタイムに100万円で銘柄Aを購入し、値上がりしたため同日中に銘柄Aを110万円で売却したとします。同日内にさらに銘柄Aが120万円に値上がりし、その後の高騰が見込まれるとして同日のナイトタイムに再度銘柄Aを購入した場合に差金決済となります。通常の株式取引に比べて取引可能時間が長いことで、差金決済となる可能性が高まります。

    参考:差金決済(さきんけっさい) よくある質問 (楽天証券株式会社公式サイト)

    流動性が少ない

    2点目のPTS取引のデメリットは、通常の証券取引所での株式売買取引に比べて利用者の数が圧倒的に少ないということがあります。

    株式売買取引では、売買それぞれの注文を出す投資家がいないと取引が成立しません。そのため、取引市場の投資家の数が少ないことで取引が成立しにくくなります。また、取引が成立したとしても通常の証券取引所での取引に比べて値段が読みにくく、投資初心者にはハードルが高くなる可能性があります。

    PTS夜間取引の注意点

    PTS取引のサービスを利用する際に注意すべき点はあるのでしょうか。これからPTS取引の利用を考えている投資家の方は、以下の3点をきちんと理解してからPTS取引を開始しましょう。

    取引の種類

    2018年12月現在、PTS取引では現物取引しか行うことができません。保有資産を担保に証券会社からお金を借りて取引する信用取引を行うことはできません。保有銘柄の株価が下がった場合でも、「空売り」(*1)を行えず基本的に損失を被る可能性が高いです。

    しかし、2019年夏にはPTS取引市場でも信用取引を行うことが可能になるとして、マネックス証券では今後のサービス配信が予定しているなど、将来的に夜間時間帯でも信用取引を行うことができるようになる可能性があります。

    (*1:信用取引を行うことで、保有銘柄の株価が下落した際にも利益を上げることが可能となる投資手法です。)

    参考:空売り(からうり) (SMBC日興証券株式会社公式サイト)
    参考:PTS取引サービスを来春より提供開始 (マネックス証券株式会社公式サイト)

    注文方法

    PTS取引では、指値注文(さしねちゅうもん)のみを行うことができ、成行注文(なりゆきちゅうもん)を行うことはできません。

    指値注文とは、投資家が株式の売買価格を指定して注文する注文方法です。一方の成行注文は、価格を指定しない注文方法です。成行注文にて売り注文を出した際には最も高値の買い注文、売り注文を出した際には最安値の買い注文と取引が成立することとなります。

    PTS取引では投資家が売買価格を指定する指値注文しか行うことができないため、一注文ごとの気配値(けはいね)(*1)の差が大きくなる状況が発生する可能性があります。そのため、通常の証券取引所で取引を行った際に含み損となる価格で銘柄を購入してしまう場合があり、注意が必要です。

    (*1:指値注文の際に投資家が売買取引を行いたいとして指定する値段のことです。)

    参考:PTS取引の注文方法及び種類 PTS取引・SOR注文の基本ルール(楽天証券株式会社公式サイト)
    参考:気配値(けはいね) (SMBC日興証券株式会社公式サイト)

    売買単位

    PTS取引では、基本的に株式発行会社が単元株数での取引を規定している場合には単元株で売買取引を行うこととなります。発行会社にて売買取引単位が定められていない場合には、1株単位から取引可能です。しかし、一定条件に該当する銘柄の場合には、10株単位での取引となるケースがあります。

  • 10株単位での取引もしくは売買停止銘柄となる場合
  • 上場取引所での売買単位が10株未満で、基準価格が6,000円未満の銘柄

    参考:売買単位 PTS取引基本ルール(SBI証券株式会社公式サイト)

    夜間取引の活用方法

    夜間取引が可能となるPTS取引システムの、投資の際の活用方法をお教えします。夜間に取引を行う以外にも様々な面で効果的に活用することができます。以下活用方法を参考にして、自身の投資に役立ててみましょう。

    株価のチェック

    翌日の値動きを予測する際に、夜間取引市場の株価の値動きを活用することができます。夜間取引市場では、通常の証券取引所が閉場したあとでも売買取引が行なわれ、株価が変動することとなります。PTS取引自体を行なわなくても市場閉場後の株価変動をチャートで確認して、翌日の株価変動を予想する際の参考とすることができます。例えば、投資信託の格付けサイトで有名なモーニングスター社の「PTS ランキング」を参考にすることで、翌日の株価変動を予想する際に非常に役立ちます。

    夜間取引サービスのPTS取引市場は、通常証券取引所の開場時間である9時よりも早く8時20分から株式売買取引を行うことができます。そのため、前日の夜間取引の結果から前日比で気配値がプラスとなっている場合に、証券取引市場の開場前に値上がりが見込まれる銘柄を夜間取引市場で購入し、開場後に売却することで利益を上げることが可能となります。

    PTS取引ができる証券会社

    ここからは、日本国内でPTS取引を行うことが可能な証券会社を3社ご紹介します。夜間取引のメリットを活用して、平日の日中になかなか取引を行うことが難しい投資家の方も積極的に株式売買取引を行っていきましょう。

    SBI証券

    ネット証券最大手のSBI証券です。

  • 取引手数料
  • 一注文の約定代金が10万円以内の場合:92円(税込)
    一注文の約定代金が50万円以内の場合:257円(税込)

    SBI証券では、通常の取引市場で株式売買取引を行うよりもPTS取引の方が一注文ごとにかかる手数料が安くなっています。

  • 取引可能時間帯
  • デイタイム:8:20〜16:00
    ナイトタイム:17:00〜23:59

    参考:「朝8:20~」「夜17:00~23:59まで」取引できるのがSBI証券のPTS取引! (SBI証券株式会社公式サイト)

    楽天証券

    楽天グループのネット証券です。

  • 取引手数料
  • 一注文の約定代金が10万円以内の場合:97円(税込)
    一注文の約定代金が50万円以内の場合:270円(税込)

    楽天証券では通常証券取引所で現物取引を行う際と同様の手数料となります。

  • 取引可能時間帯
  • デイタイム:8:20〜16:00
    楽天証券からPTS取引を利用する場合、現時点ではナイトタイム・セッションに対応しておらず、デイタイムのみの利用となります。

    参考:PTS取引・SOR注文の基本ルール (楽天証券株式会社公式サイト)

    松井証券

    ネット証券の老舗です。SBI証券の次にPTS取引を導入しました。

  • 取引手数料
  • 一注文の約定代金が10万円以内の場合:0円(税込)
    一注文の約定代金が50万円以内の場合:500円(税込)

    通常証券市場で現物取引を行う場合と同様の手数料がかかります。

  • 取引可能時間帯
  • デイタイム:8:20〜15:30
    ナイトタイム:17:30〜23:59

    ナイトタイムに対応し夜間取引が可能となっていますが、SBI証券に比べて若干取引可能時間が短くなります。

    参考:PTS取引 取引ルール(松井証券株式会社公式サイト)

    初心者はまずは一般取引の指値注文

    夜間取引について解説しました。PTS取引というサービスを使用することで、市場の開場時間帯以外でも株式売買取引を行うことができ、平日の日中に仕事があるサラリーマン投資家の方などにとっては大きなメリットがあります。しかし一方で、PTS取引サービスが証券会社の独自サービスであることで、通常証券取引所での取引に比べて株式の流通量や投資家の数が少なく、取引可能な銘柄が限定されてしまうことで注文が成立しにくいデメリットがあります。また、きちんと仕組みを理解していないと差金決済として法令違反に該当してしまう可能性や、証券市場よりも高値で買い付けてしまう場合があります。

    そのため、知識の少ない投資初心者は、まず通常の証券取引所を経由した指値注文を行うことが大切です。

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