iDeCo(イデコ)に加入しようか迷っている方に、iDeCo(イデコ)のメリットやデメリット、加入条件について解説します。また、iDeCo以外の国民年金基金や小規模共済への加入や併用を考えている方のためにも、それぞれのメリットとデメリットをまとめています。ご自身の状況に合わせて、年金への加入を決めましょう。
自営業者にとってiDeCo(イデコ)は必要か
2001年6月に確定拠出年金法が制定されたことにより、同年10月に個人型確定拠出年金、通称iDeCoが誕生しました。iDeCoは、厚生年金や企業年金と比べて、加入のハードルが低く、幅広い職業の方が利用できる私的年金として注目を浴びました。
しかし、実際に自営業やフリーランスの方にとって、本当にiDeCoへの加入はメリットがあるのでしょうか?
自営業者の年金
自営業の方が加入できる年金は、会社員や公務員と比べて少ない状況にあります。
そもそも、日本の年金は国民年金、厚生年金、そして個人で加入できる私的年金があります。国民年金は、加入が義務付けられていますが、厚生年金は会社員と公務員のみ加入が義務付けられています。つまり、自営業の方は、会社員や公務員の方と比べて、加入できる年金が限定されているのです。
自営業の方は、加入できない厚生年金を私的年金で補い、将来に備えるしかありません。
自営業者がiDeCo(イデコ)を活用するメリット
自営業者がiDeCoを活用するメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 掛金が全額控除
- 掛金の上限額が高い
1.掛金が全額控除
iDeCoに拠出した掛金は、全額が所得控除対象となります。掛金の拠出金額が多ければ多いほど、その分税金も節約できます。例えば、以下の条件だった場合、30年間で節税できる税金は3,240,000円、年間にして108,000円も税金を節約することができます。
ただし、所得控除を受けるためには、必ず年末調整を行わなければいけません。
例)
年収 500万円
掛金 30,000円(月額)
加入期間 30年間
利率 3%
2.掛金の上限額が高い
以下の上限額をご覧ください。
職業 | 上限額 | 最低額 |
自営業 | 68,000円 | 5,000円 |
会社員(*1) | 23,000円 | 5,000円 |
会社員(*2) | 20,000円 | 5,000円 |
会社員(*3) | 12,000円 | 5,000円 |
専業主婦・専業主夫 | 23,000円 | 5,000円 |
公務員 | 12,000円 | 5,000円 |
(*1:企業型確定拠出年金や確定給付企業年金に加入していない方)
(*2:企業型確定拠出年金のみ加入している方)
(*3:確定給付企業年金のみ、または企業型確定拠出年金と確定給付企業年金を併用している方)
こちらの表から、自営業の方はの掛金がもっとも高いことがわかります。自営業の方は、会社員や公務員の方と比べて、加入できる年金が少ないため優遇されています。
上述したように、掛金の拠出すればするほど節税することができます。iDeCoは、将来に備えつつも、税金対策もできる制度でもあります。
自営業がiDeCo(イデコ)を活用するデメリット
自営業者がiDeCoを活用するデメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 元本割れリスク
- 手数料
1.元本割れリスク
iDeCoは投資信託などの金融商品を運用し、運用益を年金として受け取る年金制度です。そのため、投資の元本割れのリスクを伴います。
しかし、運用商品選びを工夫すれば、元本割れのリスクを抑えることができます。iDeCoには、元本変動型商品と元本確保型商品の2種類あります。元本変動型商品は信託投資などが該当し、元本確保型商品は預金や保険が該当します。元本変動型ばかり運用するのではなく、元本確保型も交えてバランス良く運用することが重要です。
2.手数料
iDeCoは、加入時、運用時、受け取り時には、以下のような手数料が発生します。
加入 2,777円
運用 167円〜
受取 432円
さらには、移換や脱退、還付の際にも費用が発生します。iDeCoに加入する場合は、掛金だけでなく、手数料込みの資産を用意しましょう。
iDeCo(イデコ)以外の任意の制度
iDeCo以外に、個人で加入できる年金は以下の3点があります。
- 付加年金
- 国民年金基金
- 小規模企業共済
1.付加年金
付加年金とは、国民年金の保険料に上乗せして拠出できる年金制度です。付加年金の特徴は、加入者が国民年金第1号被保険者と任意加入被保険者のみが加入できることです。つまり、会社員や公務員、さらには専業主婦(夫)の方も加入することができません。
保険料も月額400円であり、リーズナブルな値段も魅力の1つです。将来の受取金額については、200円×支払い月数で算出します。
2.国民年金基金
国民年金基金は、国民年金と名称が類似していますが、まったくの別物です。国民年金は加入が義務付けられていますが、国民年金基金は任意加入となっています。
国民年金基金も国民年金第1号被保険者が対象のため、会社員や公務員は加入することができません。生きている限りは受け取ることができる終身年金であり、受取額は契約時に決まります。
3.小規模企業共済
小規模企業共済は年金制度ではなく、退職金制度です。そのため、退職もしくは廃業したタイミングで資産を受け取ることができます。
iDeCoや国民年金基金は、受け取り年齢に到達するまで資産を引き出すことができません。しかし、小規模企業共済は一定金額内であれば、退職していない場合でも借りることができます。
それぞれのメリット・デメリット
iDeCo、付加年金、国民年金基金、小規模共済のそれぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
制度 | メリット | デメリット |
iDeCo |
掛金が全額所得控除 掛金の上限額が高い |
元本割れのリスク 手数料 |
付加年金 |
掛金が安い 終身年金 |
受け取り額が安い 国民年金基金と併用不可 |
国民年金基金 |
終身年金 掛金が全額所得控除 |
掛金の変更不可 分割受け取りのみ |
小規模企業共済 |
支払い期間内でも資産を引き出せる 掛金の上限が高い |
加入20年未満は元本割れする 受け取り時に課税 |
国民健康保険料の未納に注意
国民年金保険料を支払っていない方は、iDeCoに加入することができません。また、保険料の納付だけでなく、iDeCoに加入するためには、以下の条件を満たす必要があります。
また、会社員の方で確定拠出年金に加入している方は、以下の条件を満たさないと加入することができません。
iDeCoに加入する際には、必ず加入資格を確認しましょう。
年金の使い分けするには
iDeCoや付加年金など、任意で加入できる年金は複数あります。どの年金に加入すればいいのか迷った時は、ご自身の資産状況に合わせて、年金を使い分けましょう。
まず、今ある資産を守りたいと考えている方は、国民年金基金や付加年金がおすすめです。掛金が安く抑えられ、さらには運用期間中の手数料もかかりません。元本割れのリスクも抑えられます。
資産を増やしたいと考えている方は、iDeCoや小規模企業共済などを併用することをおすすめします。iDeCoなどの資産運用型の年金は、運用次第で掛金額以上に資産を増やすこともできます。ただし、リスクの高い投資は元本割れを引き起こすこともあります。特に投資初心者の方は、ロボアドバイザーや金融機関のスタッフと相談して決めるようにしましょう。
転職した場合の手続き
職業が変われば、加入できる年金や掛金額も変わります。転職で年金の加入や変更する際は、必要な手続きを行うようにしましょう。今回は会社員から自営業者になった場合と自営業者から会社員になった場合、iDeCoへの加入について解説します。
会社員から自営業
会社員から自営業に変わった場合は、以下の2点に注意しましょう。
- 国民年金保険料等の未納がないこと
- 加入者被保険者種別変更届を提出
1.国民年金保険料等の未納がないこと
上述したように国民年金保険料の支払いは、iDeCoの加入条件です。もし、未納であることが判明した場合、加入した後であっても、iDeCoの掛金は還付されます。還付時は、掛金から還付手数料(1,461円〜)が差し引かれます。
さらに、還付された月に遡って追納することもできません。iDeCoの支払いは26日と定められています。26日以外は掛金を支払うことが認められていません。
2.加入者被保険者種別変更届を提出
職業が変わった場合は、iDeCoの掛金の上限額も変動します。自動的に掛金額が変動するわけではなく、変更手続きを行わなければいけません。
すでにiDeCoに加入している方は、利用している金融機関もしくはiDeCo公式サイトから「加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)」をダウンロードし、提出しましょう。
自営業から会社員
自営業から会社員に変わった場合は、以下の2点に注意しましょう。
- 企業型確定拠出年金の有無
- 加入者被保険者種別変更届を提出
1.企業型確定拠出年金の有無
勤め先が企業型確定拠出年金を導入している場合、iDeCoで運用してきた資産を企業型確定拠出年金に移換することができます。移換する場合は、「加入者資格喪失届」をダウンロードし、金融機関に提出しましょう。
2.加入者被保険者種別変更届を提出
企業がiDeCoの加入を認めている場合は、運用を継続することができます。ただし、被保険者種別は変わるため、上述したように、利用している金融機関もしくはiDeCo公式サイトから「加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)」をダウンロードし、提出しましょう。
iDeCo(イデコ)と自営業の相性を理解して運用しましょう
今回はiDeCoが自営業の方にとって、必要なのかを解説しました。
自営業の方は、会社員や公務員の方と比べて加入できる公的年金が限定されています。将来に備えるためには、私的年金などに加入する必要がありますが、iDeCo、付加年金、国民年金基金にはそれぞれのメリット・デメリットがあります。自分の資産の状況やリスクをどのように抑えるかで、年金の加入を判断するようにしましょう。