iDeCo(イデコ)に加入すると、所得控除や運用益の非課税などの税制優遇を受けることができます。ただし、それらの税金を節約するためには年末調整などの手続きが必要です。今回は、iDeCoで節約できる税金、節税に必要な手続きについて解説します。自営業者や公務員など職業で節約できる税金の上限や手続き方法が異なります。仕組みをきちんと確認してから税金対策をしましょう。
iDeCo(イデコ)による節税の仕組みとは
iDeCoはどのように税金を節約できるのでしょうか? まずは、節税の仕組みについて解説します。
そもそもiDeCo(イデコ)とは
iDeCoの正式名称は個人型確定拠出年金で、個人で金融機関の選定から運用まで行う年金制度です。2001年の開始当初は、自営業者や企業年金のない会社員のみ加入できました。しかし、2017年の加入対象拡大により、企業年金のない会社員、公務員、専業主婦(夫)も加入が可能となり、2018年8月には加入者100万人を突破しました。
iDeCo(イデコ)の3大節税メリット
iDeCoのメリットは節税効果が大きいことです。iDeCoの節税効果として、以下の3点が挙げられます。
- 掛金が全額所得控除
- 運用益・利息が非課税
- 受け取り時に税制優遇
1.掛金が全額所得控除
iDeCoの掛金は全額が所得控除対象です。所得控除とは、所得税や住民税の税金を節約できる制度で、年末調整で税金の支払いを調整します。節約した所得税は12月もしくは1月に、住民税は6月以降の給与等に反映されます。ただし、iDeCoの支払い方法で事業主払込を選んでいる場合は、年末調整の手続きは不要です。
2.運用益・利息が非課税
iDeCoの運用益は非課税対象です。通常、株式投資や投資信託の運用益には20.315%の税金が課されます。例えば、40,000円の利益が発生した場合、8,126円の税金を支払う必要があります。iDeCoの場合は、40,000円の利益が発生しても支払う税金は0円です。
3.受け取り時に税制優遇
iDeCoの資産を受け取る際にも、控除が適用されます。iDeCoは運用した資産を60歳以降に受け取ることになり、その際、一括もしくは分割のどちらかを選びます。一括の場合は退職所得控除、分割の場合は公的年金等控除が適用されます。受け取りのタイミングで、税金を節約することができるのです。
職種別税制メリットの違い
先ほどiDeCoを活用すると、税金を節約することができると解説しました。しかし、節税できる金額は職業によって異なります。その理由は、職業ごとに掛金の上限額が異なるためです。
職種別掛金
iDeCoでは、職業ごとに以下のような掛金の上限額(月額)が定められています。つまり、自営業の場合は最大で816,000円の所得控除を利用できますが、公務員や企業年金を併用している会社員は最大で144,000円の所得控除しか利用できません。
職業 | 上限額 | 最低額 |
自営業 | 68,000円 | 5,000円 |
会社員(*1) | 23,000円 | 5,000円 |
会社員(*2) | 20,000円 | 5,000円 |
会社員(*3) | 12,000円 | 5,000円 |
専業主婦・専業主夫 | 23,000円 | 5,000円 |
公務員 | 12,000円 | 5,000円 |
(*1:企業型確定拠出年金や確定給付企業年金に加入していない方)
(*2:企業型確定拠出年金のみ加入している方)
(*3:確定給付企業年金のみ、または企業型確定拠出年金と確定給付企業年金を併用している方)
節税シミュレーション
iDeCoで節約できる税金額は、職業や掛金などで異なります。各金融機関では無料で利用できる節税シミュレーションツールを提供しています。ご自身の節税金額を一度調べてみてはいかがでしょうか?
iDeCo(イデコ)と税金の注意点
iDeCoに加入する際、以下の点に注意しましょう。
- 住宅ローン控除
- 退職所得控除
1.住宅ローン控除
住宅ローン控除を利用している方は、iDeCoの所得控除の際に注意しましょう。iDeCoは、税金が課せられる所得額を減らす所得控除です。一方、住宅ローン控除は算出した税金額から減税する課税控除です。つまり、①所得控除②課税控除の順に計算します。これにより、iDeCoに加入することで、住宅ローン控除を限度枠まで活用できない可能性も出てきます。
2.退職所得控除
iDeCoは一括で受け取る際に、退職所得控除が適用されます。しかし、この退職所得控除は勤務先の退職金と合わせた控除枠です。つまり、iDeCoを一括で受け取った際、iDeCoの受け取り額と退職金を合わせると控除枠を超えてしまうことがあります。退職金が多い方は、一括ではなく分割で受け取る方が節税できる場合があります。
iDeCo(イデコ)の税制メリットを正しく受けるために
iDeCoの節税効果は自動的に受けられるわけではありません。年末調整もしくは確定申告の手続きを経て、節税することができます。ただし、前述しましたが、iDeCoの支払い方法で事業主払込を選んでいる方は、これらの手続きは不要です。
年末調整
年末調整とは、所得にかかる税金を清算する手続きです。毎月の給与から差し引かれている所得税は概算のため、年末調整で控除を考慮した所得税を確定し、支払い過ぎた場合には12月もしくは翌年の給与に反映されます。
必要な人
年末調整が必要な方は以下の方です。
個人払込とは、iDeCoの掛金の支払い方法です。個人払込のほかに事業主払込もありますが、事業主払込の場合、勤め先が源泉徴収で税金の調整を行うため、加入者は年末調整の手続きが不要です。
手続き方法
年末調整の手続きは、以下の手順で行いましょう。
- 小規模企業共済等掛金払込証明書を受け取る(*1)
- 書類に記入
- 勤め先に提出
年末調整の書類右下に、「小規模企業共済等掛金控除」の欄があります。その欄の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」に1〜12月の掛金の総額を記入し、小規模企業共済等掛金払込証明書と一緒に勤め先に提出しましょう。
(*1:小規模企業共済等掛金払込証明書は、掛金を支払った際、10月以降に国民年金基金連合会より郵送されます。)
確定申告
年末調整の手続きを忘れた場合は確定申告を行いましょう。年末調整の最終締め切りは1月31日です。また、年末調整がない自営業者も確定申告の手続きが必要です。
必要な人
確定申告が必要な方は以下の方です。
専業主婦(夫)でiDeCoに加入している場合、確定申告が必要です。ただし、年収が103万円以下の場合は、そもそも所得税がかからないため確定申告は不要です。
手続き方法
確定申告の手続きは、以下の手順で行いましょう。
- 小規模企業共済等掛金払込証明書を受け取る
- 書類に記入
- 税務署に提出
自営業者の場合は確定申告書Bに、それ以外の方は確定申告書Aに記入します。また、10月以降に初回掛金を支払った方で、手元に小規模企業共済等掛金払込証明書が手元にない場合、支払いが証明できる通帳のコピーなどで代用可能です。
仕組みを理解して正しく節税を
今回はiDeCoの控除や節税の仕組みについて解説しました。
iDeCoには、所得控除、運用益の非課税、受け取り控除の3つの節税効果があります。ただし、これらの節税効果を受けるためには、年末調整もしくは確定申告の手続きが必要です。個人払込の会社員や公務員の方は年末調整を、年末調整を忘れた方や自営業の方は確定申告を行い、税金を節約しましょう。なお、手続きの際、年末調整、確定申告のどちらにしても小規模企業共済等掛金払込証明書は必要です。手続きの前に小規模企業共済等掛金払込証明書がきちんと手元に確認してください。