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NISA 投資

なぜNISAを使わない?デメリットから分かる利用しない理由とは

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運用益が非課税となり、儲けをそのまま受け取ることができるという大きなメリットのあるNISAですが、利用しない投資家も少なくありません。では、何故使わないのでしょうか。一般NISAと2018年から始まった積立NISAのデメリットから、その理由を分かりやすく解説していきます。また、デメリットに加えてNISAを利用して実際に運用を行っていく際に注意するべき点も説明します。

NISAを使わないひとの画像

儲かると話題のNISA、使わないほうが良い?

2014年1月から始まった税制優遇制度であるNISA口座制度は、運用益が非課税となる大きな特徴から、通常証券口座に比べて儲かるとして話題になっています。
しかし、NISAから運用を行うことで、本当に儲かるのでしょうか。
また、使わないという選択をした投資家は、なぜ非課税メリットのあるNISAを利用しないのでしょうか。

非課税などメリットも多数

NISAはわかりやすく言うと「投資にから発生した利益に税金がかからない」制度です。
現在の日本税制では、通常証券口座で行った投資の運用益には20.315%(*1)の税金がかかってしまいます。
例えば、10万円の利益が出た場合、20,315円の税金がそこから取られてしまい、手元には79,685円しか残りません。
しかし、NISAを利用することで10万円の利益は全て収益として得ることが可能になります。

(*1:所得税15.315%、住民税5%。)

NISAとは?初心者でも分かるNISA解説。種類と運用時の注意点

デメリットから見る使わない理由

非課税という投資家にとって非常に大きな利益が生じる税制優遇制度ですが、デメリットもあります。
一定の投資家が、NISAを利用しないという選択をした理由をデメリットから見ていきましょう。

損益通算できない

NISA口座では損益通算を行うことができません。
損益通算は複数証券口座での運用の利益・損失を合算してその年の損失を相殺することができます。
NISA口座での運用から発生した損失はそのまま投資家が負担しなければなりません。

参考:NISAのポイント[日本証券業協会公式サイト]

繰越控除ができない

NISAではある年に発生した損失を翌年に繰り越す「繰越控除」も行うことができません。
繰越控除を行うことで、翌年の利益と合わせて損失を相殺することが可能になります。
その年に発生したマイナスは、そのままその年の投資家の赤字となってしまいます。

損益通算・繰越控除が行えないため、NISA口座にて損失が生じた場合、投資家の負担が非常に大きくなります。

参考:NISAのデメリット[金融庁公式サイト]

損失が出た場合のリスク

非課税期間(*1)の終了時に、NISA口座にて保有している資産が損失の状態となっているケースには注意が必要になります。

[例]
・NISA口座にて100万円で資産を購入
・非課税終了時の時価は80万円
・課税口座へ移管後90万円で売却

このケースでは、当初の購入金額に対して売却金額は10万円のマイナスとなっています。(*2)
しかし、移管手続きは移管時の時価がその後も引き継がれてしまいます。
この資産は80万円のものとして扱われるため、最終的に利益を上げたとして税金も課されてしまうのです。(*3)

購入時の価格よりも移管時の価格が低く、移管時よりも売却金の方が高かった場合は注意にリスクが潜んでいます。

(*1:運用益が非課税となる投資可能な期間です。一般NISAでは5年です。)
(*2:100万円ー90万円=10万円)
(*3:売却金90万円ー資産額80万円=利益10万円)

参考:NISAのポイント[金融庁公式サイト]

売り時が難しい

「もう少し保有していれば値上がりするかもしれない」という考え方から、適切な売却タイミングがわからなくなってしまうというデメリットです。

NISAの運用益に税金がかからないという点を意識しすぎて売却に踏み切れないことが考えられます。
非課税メリットから少しでも利益を得たいために売却できないといったケースです。
また、損益通算や繰越控除も行うことができないため、損切り(*1)の決断もしにくくなってしまう可能性もあります。

(*1:保有資産に損失がある状態で売却することです。損失の拡大を防ぐ目的で行われます。)

参考:損切り[SMBC日興証券公式サイト]

長期投資を見据えた商品選びの難しさ

NISAの非課税メリットをできるだけ享受するには、長期保有に適したものへ投資することが大切と言われています。
しかし、投資知識の限られた個人投資家が、長期的な予測から適切な商品を見極めることは非常に難しいです。

将来的な株価の上昇を予想して購入したつもりが、業績が伸び悩み、株価が暴落する可能性もあります。
損失が投資家の負担へ直結するNISAでは、このようなパターンは非常にリスクが高くなってしまいます。

NISA口座を開設して放置はOK?

NISA口座は、開設する際にお金がかかりません。また、開設後に口座の維持費もかかりません。
そのため、NISA口座を開設しただけで、運用を行なわず、使わないで放置しておくこともできます。

実際、開設されている一般NISA口座のうち、全体の30%近くは使われていません。(*1)

(*1:日本証券業協会調べ。)

参照:NISA口座開設・利用状況調査(平成30年)[日本証券業協会]

NISAを使う場合の注意点

ここからは、実際にNISA口座から運用を行っていく際に注意すべき点を説明していきます。
多くのデメリットもある制度なため、注意点をきちんと意識して運用を行っていくことが大切になります。しっかり理解して効率的な運用にNISAを活用していきましょう。

配当金の受け取り方法

NISAでは、基本的に配当金についても税金がかかりません。
しかし、受け取り方法によっては税金がかかってしまう場合があります。

配当金の受取方法には、おおまかに3つあります。
・株式数比例配分方式(*1):非課税
・登録配当金受領口座方式(*2):課税
・配当金領収証方式(*3):課税
「株式数比例配分方式」以外の場合には、源泉徴収によって既に税金が引かれた状態で配当金を受け取ることになります。(*4)

(*1:指定した証券口座にて受け取る方法です。)
(*2:指定銀行口座から受け取る方法です。細かく分けると、「個別銘柄指定方式」という方法もあります。)
(*3:郵便局などに「配当金領収書」を持って行き、直接受け取る方法です。)
(*4:確定申告によっても取り戻すことができません。)

参考:NISA口座口座における配当金等受取方式に関する注意事項[日本証券業協会公式サイト]

使わなかった非課税枠

1年間の非課税枠(*1)は、その年内で使い切らなかった場合でも、翌年には全てリセットされることになります。

例えば、一般NISAを利用する投資家が1年で100万円分しか非課税枠を消費することができなかった場合でも、翌年の1月1日になった時点で、新たな非課税枠120万円から投資を改めて行うことになります。
前年の未使用分の20万円は、その年が終了した時点でなくなってしまいます。
使われなかった非課税枠を翌年へ繰り越すことはできません。

(*1:1年間で投資の利益が非課税となる、投資資金の上限額です。一般NISAでは120万円となっています。)

参考:NISAとは[金融庁公式サイト]

積立NISAは?

積立NISAは、2018年より始まった長期・分散・積立投資のためのNISA制度です。
積立NISA口座は一般NISAと比べて、口座稼働率が低いのが現状です。(*1)

では、なぜ口座開設だけで実際には利用されていないのでしょうか。
積立NISAも使わない方がよいと考えられているのでしょうか。

(*1:日本証券業協会調べ。およそ50%の稼働率です。)

参照:NISA口座開設・利用状況調査結果(平成30年6月)[日本証券業協会]

金融機関にとってのメリットが少ない

積立NISAの制度施行に伴って、各金融機関は新たにシステムを備える必要があります。またそのためのコストもかかります。
さらに、積立NISAは年間の非課税枠が40万円と低額であることからビジネスとして儲けが出にくく、金融機関が今まで積極的に長期投資を勧めてこなかったこともあり、金融機関にとってのメリットがあまりありません。
そのため、積立NISA制度自体が盛り上がっていないのが現状です。

また、個人での老後の資産形成を促したい金融庁の近年の様々な制度(*1)への、儲けにならない対応に金融機関が追われてしまっているというのもひとつの原因かもしれません。

(*1:マイナンバー制度やideco制度の登場など。)

デメリットから見る使わない理由

金融機関に対してあまりメリットがないことに加えて、個人投資家においてもいくつかデメリットがあります。
積立NISAのデメリットから制度を使わない理由を説明していきます。
積立NISAの使用を迷っている場合には、一度デメリットに目を通して理解しておきましょう。

対象商品が限られている

積立NISAは、投資可能な金融商品が金融庁によって限定されています。(*1)
2018年8月時点で6140本(*2)ある投資信託のうち、積立NISA口座から投資可能なものは161本(*3)となっています。
そのため、幅広く様々な金融商品へ投資したい投資家にとっては大きなデメリットとなります。

(*1:金融庁の規定した条件を満たした投資信託・ETFのみに限られています。)
(*2:投資信託協会調べ。)
(*3:2018年9月28日金融庁調べ。インデックス投資141本、アクティブ運用等投資信託等17本、ETF3本。)

参照:つみたてNISAの対象商品の要件(平成29年6月)[金融庁]
参照:つみたてNISA対象商品届出一覧[金融庁]

損益通算ができない

積立NISAは、複数証券口座のその年の利益・損失を合算してその年の損失を相殺できる「損益通算」を行うことができません。
積立NISA口座から行った投資はの損失はそのまま投資家が負担する必要があります。

参考:NISAのポイント[日本証券業協会公式サイト]

繰越控除ができない

通常証券口座ではその年の投資から生じた損失を翌年に繰り越すことで、翌年の運用益から支払うことが可能になります。
しかし、積立NISAではこの繰越控除も行うことができません。
積立NISAを利用して行ったその年の投資から発生した赤字は、全てその年のマイナスとなってしまいます。

参考:NISAのデメリット[金融庁公式サイト]

損失がでた場合のリスク

一般NISA同様に、非課税期間終了時にNISA口座の保有資産が含み損(*1)となっていたときにリスクが潜んでいます。
非課税期間の終了に伴って課税口座へ移管された場合、その際の時価で課税口座に移行されます。
そのため、購入時よりも安く、移管時よりも高い価格で売却してしまうと、損失に加えて税金も課されてしまうという危険性があります。

(*1:売却前の資産が損失の状態であることです。)

デメリット等を理解して、本当に必要な投資かどうかの判断をしていきましょう

一般NISA・積立NISAは非課税メリットがあるのに対して、それぞれの特徴によってデメリットもあります。
投資の上級者のなかには自身の投資スタイルや運用方針から使わないという判断をしていることもあります。
非課税によって大きな利益を得られるという点だけに囚われず、多方面の考えや視点を参考にして、実際に活用していくかどうか自身で選択していきましょう。

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