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初心者でも分かる株の信用取引について。仕組みとメリット、リスクを解説。空売りとは?

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株式投資における信用取引について解説します。信用取引の概要と利益が生じる仕組み、メリットやリスクについてお教えします。また、現物取引に比べてハイリスクを背負うこととなる信用取引を行う際に、最大限リスクを軽減する方法も説明します。信用取引についての知識を身に着けて、自身の投資において信用取引を行うかどうかを判断する際の参考にしてください。

株式の信用取引について書かれた本の画像

株式投資における信用取引

株式投資は株式売買取引を行うことで利益を上げることができます。この取引方法には「現物取引」と「信用取引」の2種類があり、投資家が自由に選択して取引を行うことができます。基本的に株式投資では、取引の約定時点で売買代金を受け渡す現物取引が採用されています。では、信用取引とはどのような取引なのでしょうか。株式投資における信用取引について解説します。

参考:現物取引(げんぶつとりひき) (SMBC日興証券株式会社公式サイト)

信用取引とは

信用取引とは、証券会社に自身の信用を預けて投資資金や資産を借り入れて取引を行う方法のことです。証券会社に自身の資産を担保に入れて株式を借り入れ、自身の保有資産額以上の株式売買取引を行う仕組みです。

参考:信用取引(しんようとりひき) (野村證券株式会社公式サイト)

信用買い

信用取引にて株式の買い付けを行うことです。「買建(かいだて)」とも言われ、証券会社に自身のお金や株式を担保として預け、買付けたい銘柄を購入する仕組みです。

信用売り

信用取引によって保有株式を売却することです。「売建(うりだて)」とも言われ、今後の値下がりが予想される銘柄を値下がり前に証券会社から借り入れて売却(売建て)し、実際に値下がりした時点で購入決済を行う仕組みです。

信用取引の意義

信用取引を行うことで市場の株式取引が活発化し、株式の適正価格の形成を促すことができます。投資家が信用取引制度を利用することで自身の保有資産以上の金額を取引することが可能となり、より多くの株式が取引されることとなります。

「買い」取引からしか取引を開始することができない現物取引では、購入可能な銘柄に需要が集中する可能性が高くなります。需要が偏ることで需要の少ない銘柄の1取引による株価への影響度が高くなり、市場において適正な株価を形成することが難しくなる場合があります。そのため信用取引制度を利用することで様々な銘柄の購入が可能となり、需要が偏らず多くの投資家の価値観を反映した公平な価格形成の促進が期待できます。

制度信用と一般信用

信用取引には制度信用取引と一般信用取引の2種類があります。これは、取引可能な銘柄や決済期限、返済までの金利が証券取引所の規則で決められているかどうかで分類されます。

  • 制度信用取引:証券会社の規則によって定められています
  • 一般信用取引:投資家と証券会社の間で自由に決定することができます
  • 参考:制度信用(せいどしんよう) (SMBC日興証券株式会社公式サイト)

    信用取引の返済方法

    信用取引では、証券会社から借り入れた株式やお金の2種類の方法で返済します。

  • 反対売買による返済
  • 現物での返済
  • 信用買いの場合には、借り入れた株式を売却する反対売買の方法か、現金による返済を行うことができます。株式売却による返済の場合には、売却時の株価によって売却総額が違い、借入金に対する投資家の損益が異なります。

    一方、信用売りの場合には株式を買戻して返済する反対売買の方法か、借り入れた株式と同様の銘柄を保有していた場合には株式自体を証券会社に渡すことで返済が可能となります。

    利益を出す仕組み

    信用取引によって利益を得る仕組みを解説します。株式や資金を証券会社から借り入れて行う信用取引では、投資家はどのようにして利益を得ることができるのでしょうか。

    買い建て

    信用取引にて株式の買い付けを行った際には、株式の売却総額から借入金額、手数料、金利分、諸費用を差し引いた金額がプラスの場合に利益を得ることができます。差し引いた金額がマイナスとなってしまった場合には、投資家が損失を被ることとなります。では、具体的に信用買いの例を見てみましょう。細かい計算が生じてしまうため手数料や金利分等は考慮せず、株式の売却金額と借り入れ金額の2種類で簡単に解説します。

    例)100万円を借り入れて100万円の株式Aを信用買いしたケース

  • 売却時に株式Aが150万円に値上がりしていた場合
  • [売却金150万円]ー[借入金額100万円]=[50万円]
    信用買いした投資家は、値上がり分の50万円を得ることとなります。

  • 売却時に株式Aが80万円に値下がりしていた場合
  • [売却金80万円]ー[借入金額100万円]=[ー20万円]
    借入金額に対して売却金額が20万円分少ないため、20万円が差し引かれることとなります。

    簡単に言うと、借入金と売却金の差額が損益となります。

    売り建て

    株式の売却を信用取引にて行った場合、借り入れた株式の売却取引を行った時点で、投資家は1度売却金を手にすることとなります。そしてその後売却した銘柄が値下がりすることで、信用売りした金額よりも安価で同銘柄を同数購入することが可能となります。投資家は、証券会社から借り入れた株式価格と買戻し金額の差額分を得ることができます。売り建ての場合も、具体的な金額で考えてみましょう。今回も手数料等の細かいお金は考慮せず説明します。

    例)株価10,000円の株式Aを100株証券会社から借り入れ、株式Aを100万円で信用売りしたケース

  • 売却後、売却銘柄の株価が700円に値下がりした場合
  • [借り入れて売却した金額:100万円]ー[株価700円の時点で100株を買戻した金額:70万円]=[30万円]
    投資家は買戻しによって30万円の利益を得ることができます。

  • 売却後、売却銘柄の株価が12,000円に値上がりした場合
  • [借り入れて売却した金額:100万円]ー[株価12,000円の時点で100株を買戻した金額:120万円]=[ー20万円]
    損失の20万円分が差し引かれます。

    借り入れた株式の売却金と買戻し時点の株価の差額が損益となります。

    売却後に売却銘柄の株価が下落することで投資家に利益が生じる取引のことを「空売り」と言い、空売りを活用することで通常の株式投資では損失となる状態でも利益を得ることが可能となります。

    信用取引のメリット

    自身の資産を担保に入れてでも信用取引を行うことで、投資家にはどのようなメリットがあるのでしょうか。信用取引のメリットを3点、以下からお教えします。

    資金力以上の取引が可能

    信用取引のメリットの1点目として、自身の保有資産以上の取引を行うことができることがあります。信用取引は、信用を証券会社に担保して資金や株式を借り入れて行うため、自身の保有資産では取引できない範囲の取引を行うことが可能となります。手元にまとまった投資資金がなくても、取引したい銘柄を売買することができるようになります。

    売りから始められる

    基本的に「買い」からでしか始めることができない株式取引ですが、信用取引によって「売り」から取引を開始することが可能となるメリットがあります。「買い」からしか取引を行うことができないと、保有銘柄の株価が下落した際に投資家は損失を被ることとなりますが、信用取引の場合には「空売り」をすることで、値下がり時点でも利益を上げる可能性があります。

    同じ保証金で1日に何度でも取引可能

    信用取引では、1日に何度も取引を行う回転売買を行うことができるメリットがあります。現物取引では、「差金決済」(*1)として法律で1日に複数取引を行うことを禁止していますが、信用取引では差金決済の禁止が適用されません。(*2)

    差金決済とは、例えば銘柄Aを100万円で購入し、同日内に値上がりしたため110万円で銘柄Aを売却し、さらに同日内に今後の値上がりが見込めるとして110万円で銘柄Aを購入した場合のことを言います。

    (*1:1日に同じ投資資金で売買取引を複数回行うことです。)
    (*2:2013年から信用取引では差金決済の禁止が撤廃されました。)

    参考:差金決済取引(さきんけっさいとりひき) (大和証券株式会社公式サイト)

    信用取引のデメリット・リスク

    証券会社からお金を借り入れて保有資産額以上の取引を行うこととなるため、小さな保有資産から大きな金額を取引することができる「レバレッジ」の倍率が高い一方で、信用取引にはデメリットがあります。実際、市場で行なわれている取引の大半は現物取引で、信用取引はしないという投資家も少なくありません。信用取引のデメリットとリスクを解説します。

    負債をかかえる可能性

    信用取引では現物取引に比べて投資家が損失を被る可能性が高い傾向にあります。例えば、現物取引で自己資産30万円から株式売買取引を行ったケースと自己資産30万円を担保に入れて証券会社から100万円を借り入れ、投資資金総額130万円で株式売買取引を信用取引にて行ったケースで比較してみましょう。

    例)

    取引種類 株価が二分の一となった場合の損失額 投資家の手元に残る資産額 投資家の負債額
    現物取引 30万円の二分の一で損失は15万円 15万円 0円
    信用取引 130万円の二分の一で損失は65万円 0円 35万円

    同額の自己資産から株式取引を行ったにも関わらず、現物取引を行った場合には負債額が0円となるのに対し、信用取引では35万円の負債を背負うこととなります。

    自己資産額以上の金額を取引できる一方で、自己資産以上の負債が発生する可能性があります。

    リスクを抑えるための方法

    信用取引の投資家が抱えうる負債リスクを抑える対策をお教えします。信用取引のメリットを利用して株式投資を行う際には、リスクヘッジをきちんと行って売買取引を行うことが大切です。

    レバレッジをかけすぎない

    レバレッジをかけすぎないことで、株価変動で損失が発生しても負債額をなんとかなる金額に抑えるなど、リスクをコントロールすることができます。

    レバレッジとは、日本語のてこの原理のことで、投資においては少額の投資資金から高額な利益を得ることができます。レバレッジの倍率を高くしてしまうと、ハイリターンが期待できる一方で、ハイリスクを背負うこととなります。自身の資産状態から返済可能な範囲でレバレッジをかけることが大切です。

    保証金は現金で

    信用取引を行う際に、証券会社から資金や株式を借り入れる際には、現金を担保に入れることが大切です。信用取引では、株式を証券会社に担保に入れることが可能ですが、現物株式を保有している銘柄と同じ銘柄を信用取引する「信用二階建て投資」を行うことは非常に危険です。

    例えば、銘柄Aを現物株式にて保有していた際に、この銘柄Aを担保にさらに銘柄Aの信用買いを行うことを、信用二階建て投資と言い、現物株式を単純に保有している際よりも二倍のリターンが期待できますが、一方で二倍ののリスクを背負うこととなります。そのため、保有現物株式を担保に入れて同銘柄にさらに投資せず、自身の保有資金を現金で担保に入れることが大切です。

    損切りルールを決めておく

    投資にリスクは付き物です。株価が値下がりした際に、見切りを付けて売却することが大切です。

    自身の保有資産が赤字の状態であるときに今後の損失の拡大を防ぐ目的で売却することを損切りと言い、投資を行ううえで非常に大切なルールとなります。特に投資初心者は、保有資産の売却タイミングが分からず結果的に大きな損失を被ることとなる可能性が高いため、事前に具体的な基準を定めておくことが大切です。

    信用取引のコスト

    証券会社から資金や株式を借り入れることでどのようなコストがかかるのでしょうか。ここからは信用取引によってかかる投資コストを解説します。

    金利と貸株料

    資金や株式を借り入れることで、金利や貸株料(かしかぶりょう)がかかります。金利とは、信用買いを行う際に資産を借り入れることでかかり、信用買いの約定代金に対してかかります。一方の貸株料は、信用売りの際に株式を借り入れたことでかかる金利で、株式の売却約定代金に対してかかります。

    金利や貸株料は証券会社によって利率が異なります。自身の証券会社の情報をきちんと確認しておきましょう。

    逆日歩

    基本的には、金利よりも貸株料の方が安い傾向にありますが、信用売りを行う際には「逆日歩(ぎゃくひぶ)」というコストが発生する可能性があります。

    通常、信用売りを行う際に貸し出す株式は証券会社が保有していることがほとんどです。しかし、貸し出す銘柄が不足した場合には、生命保険会社等の機関投資家から株式を借りて信用売りを行う投資家に貸し出すこととなります。この際にかかるコストを「逆日歩」と言います。逆日歩の金額は入札によって決定するため、金額がその時々で違い、借りた銘柄が足りない際には毎日生じるコストであるため、投資コストが大きくなる可能性があり注意が必要なお金です。

    買建て・売建てにかかる費用

    現物取引と同様に、信用取引でも手数料がかかります。現物取引では一注文を行うごとにかかる場合と、一日の売買取引額の総額に応じてかかりますが、信用取引では基本的に一取引について手数料が発生するものの、借り入れた資金や銘柄を決算する際にまとめて支払うこととなります。

    現物取引とは異なる配当

    信用取引にて株式の買い付けを行った際には、配当の受取りについて現物取引の際と異なります。

    信用取引では資金や株式を借り入れて売買取引を行うこととなるため、「株主」にはなれず、配当を受け取る権利を取得することができません。しかし、配当金は株価への影響が大きいため、信用取引を行う投資家は配当に相当する金額、「配当相当金」を受け取ることとなります。

    配当を支払った企業は、配当支払日に株価がその分値下がりすることとなります。株価の下落が生じると信用買いをしている投資家には損失が、反対に信用売りをしている投資家には利益が発生します。しかし、配当の支払いによって生じた損益は、平等なものではないため、この差分を調整するために「配当相当金」が支払われることとなります。

    信用取引を始めるには

    ここからは、信用取引を始める場合を説明します。取引の仕組みから現物取引と大きく異なる信用取引ですが、取引開始の手順にも違いがあるのでしょうか。信用取引の始め方を解説します。

    取引開始前の審査

    信用取引を行うためには、信用取引を行う専用の証券口座の開設が必要となります。通常の証券口座を既に開設している方でも、信用取引口座の開設が必須です。また、信用取引口座の開設時には、信用取引が現物取引に比べて投資家が損失を被る可能性が高いため、証券会社による審査を通る必要があります。

    SBI証券・楽天証券の場合

    信用取引専用口座開設の手順をSBI証券と楽天証券を例に見てみましょう。

    1. 信用取引口座開設基準を満たしているか確認します
    2. 信用取引口座の開設には、SBI証券、楽天証券どちらの証券会社の場合でも、信用取引口座を開設する証券会社の通常証券口座を開設していることが必須となります。他社の通常証券口座利用している場合には、信用取引口座開設前もしくは同時に開設することとなります。

      また、信用取引の損失リスクの高さから、投資経験や職業、十分な投資資金の有無などが確認されます。

    3. 信用取引口座開設に伴うリスクに関する承諾書などを確認します
    4. [SBI証券の確認必要内容]
      「各種書面の電子交付サービス/電子提出サービスの承諾について」
      「信用取引の契約締結前交付書面の電子交付」
      「信用取引口座設定約諾書、信用取引口座約款及び包括再担保契約に基づく担保同意書の電子提出」

      [楽天証券の確認書類]
      信用取引口座申込
      個人情報利用目的

      証券会社に対して、信用取引のリスクを理解したうえで信用取引口座の申込を行う旨を伝えることとなります。

      信用取引を始めるべきか

      ハイリスクを背負う信用取引ですが、行うべきなのでしょうか。信用取引のメリットとデメリット、リスクを理解したうえで説明します。

      初心者にはおすすめできない仕組み

      信用取引は、大きな利益を得る可能性が高い一方で、大きな損失を被る可能性も高くなります。そのため、投資知識に乏しい初心者が信用取引を行うことで、多額の損失を被る可能性が高くなります。

      現物取引を行う際の倍近くのリスクを背負うこととなるため、投資に不慣れな初心者には向いていない取引方法と言えます。

      慣れてどうしてもやりたい場合

      信用取引をリスクを背負ってでもやりたい場合には、条件付きで空売りを利用してリスクを軽減させることが大切です。

    5. 空売りする銘柄Aを現物で保有している
    6. 銘柄Aに、現時点で利益が発生している
    7. 空売りは、証券会社から借り入れた資金や株式をもとに、今後の値下がりが予想される銘柄を売却し、株価が下落した時点で買い戻す投資方法です。上述の場合に空売りすると、空売り後に銘柄Aの株価が高騰し損失を被ることとなる場合でも、買戻しせず現物株式を証券会社に渡すことで返済を完了させることができ、手数料の軽減に繋がります。

      信用取引を行う際には、値動きに左右されないための用意をしておくことが大切です。

      参考:空売り(からうり) (SMBC日興証券株式会社公式サイト)

      余剰資金の余剰資金で始める

      信用取引は、自身の保有資産額以上の株式取引を行うことができ、現物取引では禁止される差金決済が行えることや、空売りによって通常時であれば損失となる局面でも利益を得ることが可能となるメリットがあります。しかし一方で、証券会社から資金を借り入れることで現物取引以上の大きなリスクが生じる可能性があります。そのため、信用取引を行う際には無くなってもよい余剰資金で行うことが大切です。

      自身の投資歴や保有資産の状況を確認して、ハイリスクを予測したうえで信用取引の開始を判断しましょう。

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