個人事業主の方にとって、将来の備えは非常に重要です。iDeCo(イデコ)は、将来に備えられると同時に税金を節約できる年金制度でもあります。今回は、そんなiDeCoの個人事業主にとってのメリット、デメリットを解説します。なお、iDeCoのほかにも節税効果のある、小規模企業共済や経営セーフティ共済についてもご紹介します。

個人事業主にとってのiDeCo(イデコ)
そもそもiDeCoとは、個人で金融機関の選定から運用まで行う任意加入の年金制度です。iDeCoは各職業ごとに掛金の上限額が設けられており、もっとも限度枠が大きいのが個人事業主です。つまり、iDeCoは個人事業主を優遇している年金制度でもあります。
個人事業主の年金・退職金
個人事業主が加入できる年金は、会社員と比べて限定されています。そもそも、日本の年金制度は、3階建て構造となっており、1階部分は国民年金、2階部分は厚生年金、そして3階部分に企業年金などの私的年金となっています。しかし、個人事業主は、厚生年金に加入することができません。つまり、国民年金と私的年金で将来の必要資金を補わなければいけません。
退職金に関しては、小規模企業共済制度を利用することで受け取ることができます。ただし、小規模企業共済は240ヶ月以上加入しないと元本割れとなり、加入期間が短い人にとっては不利になってしまいます。
個人事業主の年金のための強い味方
個人で加入できる年金には、様々な種類があります。その中でも特に個人事業主におすすめな年金は、以下の3つです。
- iDeCo
- 国民年金基金
- 付加年金
1.iDeCo(イデコ)
個人型確定拠出年金、通称iDeCoは、加入者自らが金融機関の選定、掛金の拠出、運用まですべて行います。
確定拠出年金には企業型と個人型の2種類がありますが、企業型は企業型確定拠出年金を導入している企業に勤めている会社員のみが利用できます。一方で、iDeCoの場合は、個人事業主から、専業主婦(夫)、会社員、公務員など幅広い職業の人が加入できます。さらに、iDeCoに加入していた会社員が個人事業主に変わった場合でも、引き続き運用を継続することができます。
iDeCoの掛金は、職業ごとに上限額が定められています。その中で、もっとも掛金が高いのが個人事業主です。個人事業主は、最大で月額68,000円拠出することができます。iDeCoは個人事業主を優遇した年金制度でもあります。
2.国民年金基金
国民年金基金とは、国民年金に上乗せして支払う公的年金制度です。国民年金と国民年金基金の違いは、加入条件です。国民年金は、20歳以上60歳未満であれば加入が義務づけられています。国民年金基金の場合は、20歳以上60歳未満の第1号被保険者が対象です。つまり、会社員や公務員は国民年金基金に加入することができないのです。
国民年金基金のメリットは、終身年金であることです。iDeCoは一括、もしくは20年の分割で年金を受け取りますが、国民年金基金の加入者は、生きている間はずっと年金を受け取ることができます。
3.付加年金
同じく個人事業主が加入できる年金に付加年金があります。付加年金も国民年金基金と同じく、会社員や公務員は加入することができません。また、拠出方法も国民年金に上乗せする形で支払います。
付加年金のメリットは、2年の受給で掛金の元を取り戻すことができることです。付加年金の掛金は月額400円、受給額は200円×拠出期間(月数)で算出します。これを踏まえて、以下の例を見てみましょう。支払い額は10年で48,000円で、受給額は1年で24,000円です。1年目では24,000円ですが、2年目では48,000円、3年目には72,000円をトータルで受け取っていることになります。つまり、2年で支払額と同額を受け取っていることとなります。
例)
拠出期間 120ヶ月(10年) 支払額 400円×120=48,000円
受給1年目 200円×120=24,000円
受給2年目 200円×120=24,000円(総受取額48,000円)
受給3年目 200円×120=24,000円(総受取額72,000円)
iDeCo(イデコ)のメリット
iDeCoのメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 掛金が所得控除
- 運用益が非課税
- 受け取り時に控除
1.掛金が所得控除
メリット1つめは、掛金の全額が所得控除の対象になることです。個人年金では、掛金の金額に応じて所得控除が適用されますが、掛金が80,000円以上の場合は最大で40,000円と上限が定められています。しかし、iDeCoの場合は、上限が定められておらず、全額の所得控除を受けることができます。
2.運用益が非課税
iDeCoは投資信託などの運用益を年金として受け取りますが、その運用益には税金が課されません。本来、株式投資や信託投資などの投資の利益には、20.315%分の税金が徴収されます。例えば、40,000円の利益には8,126円の税金が課されます。しかし、iDeCoで40,000円の利益が発生しても、税金を徴収されることはなく、全額を年金や運用に利用することができます。
3.受け取り時に控除
iDeCoの年金の受け取りの際は、控除を受けることができます。受け取り時の控除は、退職所得控除と公的年金等控除があります。一括で受け取る場合には退職所得控除、分割で受け取る場合には公的年金等控除が受けられます。
iDeCo(イデコ)のデメリット
iDeCoのデメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 60歳まで引き出し不可
- 元本割れのリスク
1.60歳まで引き出し不可
iDeCoに拠出した掛金や資産は、原則60歳になるまで引き出すことができません。ただし、一部例外的に資産の引き出しが認められている場合があります。例えば、加入者本人が死亡した場合です。加入者本人が死亡した場合、iDeCoで運用した資産は一時金として遺族が受け取ることができます。ただし、受け取りには申請手続きが必要です。
2.元本割れのリスク
iDeCoは元本割れのリスクを伴います。投資信託などで年金を増やすiDeCoは、商品価値の変動により、資産が掛金総額を下回ってしまうこともあります。
ただし、分散投資や長期投資でリスクを抑えることは可能です。また、商品の組み合わせによってもリスクを分散できます。iDeCoには元本変動型商品と元本確保型商品があり、元本変動型は投資信託が、元本確保型は定期預金や保険が該当します。この2つの商品をバランス良く組み合わせることも大切です。
iDeCo(イデコ)に加入できる個人事業主
個人事業主がiDeCoに加入する場合、以下の条件を満たさなければいけません。
つまり、60歳以上の方、国民健康保険を未納もしくは免除されている方、農業年金基金に加入している方は、iDeCoに加入することができません。さらに、海外居住されている方もiDeCoの資格を喪失するため、注意してください。
個人事業主が加入できる制度
iDeCoのほかに、税金や経費を節約できる制度はいくつかあります。そのなかでも、個人事業主が加入できる以下の3つの制度をご紹介します。
- 小規模企業共済
- 経営セーフティ共済
- 各種控除
1.小規模企業共済
小規模企業共済とは、個人事業主が1,000〜70,000円の間で積み立て、事業が廃止した時に積立金を退職金として受け取る制度です。小規模企業共済もiDeCoと同様に掛金の全額が所得控除となるため、大きな節税効果が期待できます。
しかし、小規模企業共済は240ヶ月以上加入しないと掛金を下回ってしまうというデメリットがあります。つまり、240ヶ月以下の短期加入者は元本割れを引き起こしてしまいます。
2.経営セーフティ共済
経営セーフティ共済の正式名称は、中小企業倒産防止共済制度です。取引先が倒産した際、中小企業の共倒れを防ぐために設立された制度です。加入者は5,000〜200,000円の掛金を積み立て、万が一の場合には積立金の10倍まで無担保・無保証人で借り入れすることができます。
経営セーフティ共済の特徴は、掛金が経費扱いになることです。経費であれば、控除を受けることができるため、所得税の節税になります。ただし、掛金には上限が設けられており、拠出できるのは最大で800万円までです。
3.各種控除
個人事業主の方は、制度だけでなく各種控除を利用することで節税することができます。節税ができる控除の1つに青色申告特別控除が挙げられます。青色申告特別控除は、主に個人事業主が利用できる確定申告方法で、最大で65万円の控除を受けることができます。
そのほかにも、生命保険、介護医療保険、個人年金の控除を利用することもできます。それぞれ最大で4万円の控除枠のため、3つ利用すれば12万円分の控除を利用することができます。
個人事業主はiDeCo(イデコ)で節税し、将来に備えましょう
今回は、個人事業主にとってのiDeCoのメリット、デメリットを解説しました。
個人事業主の方は、会社員や公務員と比べて、加入できる年金が限定されています。iDeCoや国民年金基金、付加年金を活用して、将来に備えるようにしましょう。さらに、iDeCoは節税効果の大きい制度でもあります。将来に備えつつ、所得控除を活用して税金を節約できるのがiDeCoのメリットでもあります。
iDeCoのほかにも、小規模企業共済や各種控除を利用することで税金対策ができます。個人事業主の方は、複数の年金制度や控除を使い分け、控除枠を最大限に活用しましょう。