みなさんは確定拠出年金の企業型と個人型、通称iDeCo(イデコ)についてきちんと理解していますか? 今回はそんな確定拠出年金の違いから加入資格、特徴までご紹介します。また、企業型とiDeCo(イデコ)は併用することも可能です。併用する場合は注意点もあるので、必ず確認するようにしましょう。
iDeCo(イデコ)と確定拠出年金
iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金のことです。この確定拠出年金は企業型もあり、企業型DCとも呼ばれています。今回は個人型と企業型の2つの違いについて解説します。
確定拠出年金とは
日本の年金は国民年金や確定拠出年金などいくつかの種類にわかれています。日本の20歳の以上の国民には国民年金に加入する義務があり、さらに会社員や公務員の場合は厚生年金にも加入します。
一方の確定拠出年金に関しては任意の加入になります。国民年金や厚生年金だけでは不安な場合、確定拠出年金にも加入することで、将来に備えることができます。この確定拠出年金には企業型と個人型の2つに分類されます。
企業型
企業型確定拠出年金は、企業型DCとも呼ばれます。企業型の場合は、企業で定められた掛金を元に企業が選んだ投資先で運用を行います。そのため、金融商品は企業が決めた中で選択することになります。
また、企業型確定拠出金の対象者は会社員です。自営業者やフリーランスの場合は加入することができません。
個人型
一方の個人型確定拠出年金、通称iDeCo(イデコ)は自分で掛金を負担します。自己負担でありますが、その分金融機関や金融商品を自分で選択することができます。つまり、どこに投資するかを自分で決めることが可能です。
個人型確定拠出金は20歳以上であればiDeCo(イデコ)に加入することができます。自営業者や公務員、さらには専業主婦であっても利用することができます。
企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ)の違い
企業型確定拠出年金は企業が、iDeCo(イデコ)は個人が積み立て、運用する制度です。では、この2つの違いについてさらに詳しく解説していきます。主な違いとしては以下の6点が挙げられます。
・加入条件
・掛金
・支払い方法
・金融機関、運用商品
・口座管理料
加入条件
企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ)では対象者が異なります。企業型確定拠出年金の場合、制度が整備されている企業の会社員が対象となります。また、企業によっては加入できる条件が異なるため、会社員であっても加入が限定されることもあります。
一方のiDeCo(イデコ)は20歳以上で国民年金や厚生年金のいずれかに加入していれば利用することができます。ただし、企業型確定拠出年金に加入している会社員の方で、その企業がiDeCo(イデコ)を禁止している場合は加入は認められません。
掛金
企業型確定拠出年金は掛金の金額やその上限も企業が決めます。そのため、加入している会社員は原則自分で自由に掛金を決めることができません。
iDeCo(イデコ)の場合、5,000円から積み立てが可能です。上限に関しては職業によって異なり、自営業者の場合は68,000円、公務員の場合は12,000円、専業主婦の場合は23,000円、そして会社員の場合は12,000〜23,000円と企業型確定拠出年金などの有無で上限が変わります。
支払い方法
企業型確定拠出年金は給与から一定の金額が掛金として積み立てられます。積み立て金をもとに運用が行われ、増えた資産は資産管理機関にて支払い、管理が行われます。
iDeCo(イデコ)の場合は指定口座から支払いが可能です。基本的には自分で運用、管理するため、支払いに関しても自分で手続きを行う必要があります。ただし、給与から天引きすることもできます。
金融機関・運用商品
金融機関に関しても企業型確定拠出年金の場合は企業が決めます。会社員は自分で金融機関を選ぶことができません。企業が決めた金融機関で、指定された金融商品のなかから運用先を選択します。
iDeCo(イデコ)は自分で金融機関、運用商品を決めることができます。しかし、iDeCo(イデコ)を取り扱っている金融機関は非常に多く、さらに運用商品も幅広く揃っています。正しい知識を身につけてから選ぶようにしましょう。
口座管理料
確定拠出年金は金融機関で口座を開設し、運用を行います。その際には口座管理料として手数料が発生します。
企業型確定拠出年金の場合は、基本的に企業が手数料を負担しますが、iDeCo(イデコ)は自己負担です。しかし、金融機関によっては口座管理手数料が無料になるので、加入前に確認するようにしましょう。
iDeCo(イデコ)のメリット
企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ)の違いはわかりましたか? では、次はiDeCo(イデコ)に加入するメリットについてご紹介します。iDeCo(イデコ)では主に以下の4つのメリットが挙げられます。
・所得控除ができる
・運用中に得た利益は非課税
・受け取り時は「公的年金控除」「退職所得控除」対象
・少額で始められる
所得控除ができる
iDeCo(イデコ)は所得控除の対象です。所得控除とは税金対象の所得を減らすことができる制度です。つまり、所得控除が適用されると支払う税金を減らすことができます。
所得からiDeCo(イデコ)の掛金を拠出した場合、その金額分だけ所得税や住民税を節税することができます。
運用中に得た利益は非課税
株式投資や投資信託など、投資で発生した利益には通常税金がかけられます。しかし、iDeCo(イデコ)の運用において、発生した投資の利益には税金が課せられません。
通常の投資であれば支払う必要がある税金もiDeCo(イデコ)であれば支払う必要がないのです。
受け取り時は「公的年金控除」「退職所得控除」対象
iDeCo(イデコ)の受け取りは一括もしくは分割で受け取ることができます。一括を選んだ場合は退職所得控除、分割を選んだ場合は公的年金控除が適用されます。
つまり、どちらの受け取り方法にしろ控除の対象となり、税金対策にもなります。ただし、一括で受け取る場合には、退職金の受け取り額が多いと、税金を多く支払わなければいけないこともあるので、注意しましょう。
少額で始められる
iDeCo(イデコ)は5,000円という少額資金から始められます。収入のない専業主婦でも、少ない金額で運用が開始できるのは魅力ポイントでしょう。
ただし、職業によって掛金の上限が設けられています。特に会社員の場合は、加入している年金によって上限金額が変動するため、必ず確認するようにしましょう。
iDeCo(イデコ)のデメリット
税金対策ができ、さらには少額資金で始められるiDeCo(イデコ)ですが、一方でデメリットもあります。それは、自由に資産を引き出せないことと、元本割れのリスクがあることです。
60歳まで引き出せない
iDeCo(イデコ)は年金を増やすための制度です。そのため、60歳になるまではiDeCo(イデコ)の資産を引き出すことができません。
ただし、一部例外もあります。例えば加入者本人が死亡した場合などです。その場合は一時金としてiDeCo(イデコ)の資産を一括で受け取ることになります。
投資信託運用の場合の元本割れのリスク
iDeCo(イデコ)の運用方法は定期預金もしくは投資信託のどちらかを選択します。投資信託とは、掛金をもとに株式や債券に投資する方法です。
投資は元本以上に利益を出すことができれば、損失で元本割れになるリスクも伴います。投資信託を選択する場合は、必ず投資のリスクについても把握するようにしましょう。
企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ)の併用
従来は企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ)を同時に加入することができませんでした。しかし、法律が改正されたことで、2017年以降は併用することが可能となりました。
しかし、併用するためにはいくつかの条件を満たす必要があります。併用を検討している方は、必ず確認するようにしましょう。
企業に企業型確定拠出年金の制度があるのか
そもそも勤め先に企業型確定拠出年金がなければ、加入することができません。確定給付企業年金に加入している方がいるかもしれませんが、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金は違います。まずは、企業が企業型確定拠出年金が整備されているのか確認しましょう。
iDeCo(イデコ)との併用が認められているか
企業型確定拠出年金に加入できる場合、企業がiDeCo(イデコ)との併用を認めているのか確認しましょう。もし、iDeCo(イデコ)との併用を禁止している場合は、iDeCo(イデコ)に加入することができません。iDeCo(イデコ)の加入条件を満たしている場合でも、企業が禁止している場合は併用できません。
マッチング拠出ではないか
2012年から企業型確定拠出年金にマッチング拠出が認められるようになりました。マッチング拠出とは、企業型確定拠出年金に個人でも掛金を追加できる制度です。もし勤め先の企業型確定拠出年金がマッチング拠出を採用している場合は、iDeCo(イデコ)との併用ができません。
併用のメリット
企業型確定拠出年金かiDeCo(イデコ)を併用する場合、主に2つのメリットがあります。それは拠出限度額の有効活用と金融機関の選択幅が広がることです。
拠出限度額が有効活用できる
企業型確定拠出年金やiDeCo(イデコ)には拠出限度額が定められています。拠出限度額内であれば所得控除が対象です。
もし、企業型確定拠出年金に加入している場合で拠出限度額に余裕がある場合は、iDeCo(イデコ)に加入することで、拠出限度額いっぱいまで掛金を拠出することができ、支払う税金を抑えることができます。
金融機関を自由に選べる
企業型確定拠出年金の場合、金融機関は企業が決めます。会社員は決められた金融機関で商品を選び運用を行います。
しかし、iDeCo(イデコ)を併用した場合、iDeCo(イデコ)の金融機関は自分で選択することができます。さらに、商品選びもできるため、選択幅が広がります。
併用のデメリット
企業型確定拠出年金とiDeCo(イデコ)を併用した場合、金融機関を自由に選択することができます。その一方で、併用することのデメリットも生じます。
手間がかかる
併用する場合、その分運用などの手間も増えます。特にiDeCo(イデコ)は自分で金融機関や金融商品を選ばなければいけません。これまで企業が行なっていた作業を自分で行う必要があり、また金融に関する知識も必要になります。
掛金の総額は変わらない
併用したからといって、その分掛金を増やすことはできません。なぜなら1人あたりの拠出金額の上限が定められているからです。将来のために多く掛金を拠出したい場合でも、決まった拠出金額の中で運用しなければいけません。
個人型と企業型の確定拠出年金の違いの理解
今回は個人型と企業型の確定拠出年金の違いについて解説しました。個人型と企業型は併用することも可能ですが、その場合にはいくつかの条件を満たす必要があります。
また、併用する場合はその分手続きや運用にも手間がかかります。併用する場合は必ずメリットやデメリットを理解してから開始するようにしましょう。