NISAや積立NISA口座で資産運用を行っていきたいと思った際に、「分配金」という単語を見聞きする投資家の方も多いのではないでしょうか。この分配金はそもそもどのお金から支払われているのでしょうか。また、分配金を再投資に回すことはできるのか、NISAから分配金を受け取ることで非課税メリットに何か影響はあるのでしょうか。分配金の概要や再投資について解説していきます。投資信託の運用を行っていく際に必見の情報が盛りだくさんですので、分配金について知りたい方は参考にしてみてください。
NISA口座での運用における分配金の有効活用と注意点は?
NISA口座から資産運用を行う際に、分配金を非課税のメリットと併せて有効活用していく方法はあるのでしょうか。また、併用の際に注意すべき点はあるのでしょうか。分配金の概要とその種類、再投資の際に注意すべきポイントをデメリットも含めて説明します。
分配金とは
投資信託を運用することで発生した利益の一部を投資家に還元するお金のことです。決算期(*1)にその年の運用実績や今後も見据えて運用会社が決めた金額が支払われます。投資信託の資産を元に支払われるお金のため、分配金の分だけ投資信託の基準資産額は下がります。
この分配金には、「普通分配金」「元本払戻金(特別分配金)」の2種類があります。それぞれの特徴と違いから、NISAや積立NISAとの活用を考えていきましょう。
(*1:会社の1年間の業績を計算して、利益や損失を決定する会計期末の時期のことです。会社によって異なります。)
普通分配金
普通分配金とは、分配金の支払いがあった際に個別元本(*1)に対して上回った部分のお金を指します。元本の運用益から支払われ、資産運用の利益として税金がかかります。(*2)
(*1:分配金を受け取る投資家が、投資信託を購入した時の基準価格のことです。)
(*2:所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%ががかかります。)
元本払戻金(特別分配金)
対して、元本払戻金とは個別元本を下回っている部分の金額のことです。元本の一部が払戻されたと見なされ、税金がかかりません。また、元本払戻金の分だけ個別元本は減少します。(*1)
(*1:個別元本の金額に対して、余った部分は普通分配金となります。)
分配金コースの種類
投資信託の分配金には、先程の2種類分類のほかに取扱いに関する
という3種類のコースがあります。それぞれのコースの概要とメリット・デメリットを見て、自身に合った受け取り方法やコース選択をしてNISAとの資産運用の際に役立てていきましょう。
再投資
分配金を自動的に保有ファンドに再度投資するコースです。NISA・積立NISAのどちらでも再投資コースを選択して手間なく再投資を行うことができます。
[メリット]
例えば、100万円の資産を年利2%の口座へ預けると1年後には口座内の資産は102万円になります。これは、元本100万円に対して年間2万円の利子がついたことになります。さらに、翌年も預けたままにしておくと元本102万円としてさらに年利2%がつくため、2年後には104万円400円となります。(*3)このような、雪だるま式に資産が増加する複利効果が再投資コースのメリットです。
税金が既に引かれた状態の分配金を使って、購入可能な分だけ同じファンドを購入してくれるため、投資家自身の手間が減るというメリットがあります。また、購入時の手数料もかかりません。
[デメリット]
再投資コースを選択することで、分配金を現金にて受け取ることができず、再投資以外に分配金を用いることができません。
再投資は金融機関によってNISA口座から行えるところと、そうでないところがあります。再投資自体を行えないところもあるため、分配金再投資を行いたい投資家にとって金融機関選びの際の足かせとなってしまう可能性があります。
(*1:利子を元本に組み込むことで、利子がさらなる利子を生むことです。)
(*2:投資信託のことです。)
(*3:元本102万円×年利2%[1.02]=104万400円)
口座受取
金融機関の口座から、分配金を現金で受け取るコースです。決算日に、保有している投資信託の数に応じた分配金が支払われます。
[メリット]
分配金を現金で定期的に使用用途が限定されずに、受け取ることができます。
[デメリット]
分配金は、受け取りによって元本の基準価格が下がります。長期的に見て運用資金が減ることで、複利効果・投資効果が薄れてしまいます。
分配金は1度受け取ると、株式の配当金と同様に源泉徴収にて税金が引かれてしまい、複利効果を高めたい方にとってはデメリットとなります。また、受け取り回数が多いほど引かれる税額が多くなるため、支払い回数にも注意が必要になります。
無分配
投資信託の運用期間には分配金が一切支払われないコースです。分配金は償還(*1)などの際にまとめて支払われ、運用期間中の運用益は全て次の運用に回されます。
[メリット]
分配金が再度投資に回されるため、複利効果によって資産の基準価格を上げることができます。また、売却益には税金がかかりますが、分配金を保有しているだけであれば、税金がかかりません。税額分、再投資コースよりも多く次の運用資金にすることができ、この点からも非常に高い複利効果が期待できます。
[デメリット]
決算期ごとに分配金を定期的に受け取りたい方には適していません。
無分配の投資信託は、上述の2コースのようにファンド自体に無分配型であることがあまり明示されません。実質的に分配金の支払い方針が「無分配」となっているファンドがほとんどで(*2)、銘柄選びの際に無分配ファンドかどうかがわかりにくいというデメリットがあります。
(*1:投資信託の満期日によって、投資資金が投資家へ返還されることです。)
(*2:書面で無分配型ファンドを明言しているものは少なく、実質無分配となっているものがほとんどです。)
分配金の受取、再投資の注意点
NISA利用時の分配金の取扱いコースは購入したファンドや自身の投資スタイルによって最適なものが変わってきます。また、各コースによってメリット・デメリットもあります。そこで、分配金の受け取りや再投資を行う際に、知っておきたい注意点を4つご紹介します。分配金受け取り、もしくは再投資を行う前にきちんと確認し、慌てず対応できるようにしておきましょう。
分配金の再投資はNISAの上限額にカウント
再投資はNISAの非課税枠(*1)を消費して行われます。基本的に、再投資コースは分配金の支払いに伴って自動的に同じファンドが購入可能な分だけ新たに購入される仕組みとなっています。そのため、知らない間にその年のNISA非課税枠を使い切ってしまっている可能性があり、他の銘柄や別の金融商品へ新たに投資を行いたくても、行えなくなってしまうリスクが潜んでいます。
(*1:運用益について、非課税の適用を受けることができる年間投資額の上限です。)
参考:NISA(少額投資非課税制度)[マネックス証券公式サイト]
受け取り方法を間違えると再投資できない
分配金再投資を行いたい場合には、自身のNISA口座を「NISA口座から分配金再投資を行う」というコースに指定する必要があります。(*1)このコース選びを誤ってしまうと再投資ができません。証券会社ごとに手続きや選択方法は異なりますので、自身のNISA口座の金融機関の情報を確認して、設定しておくことが大切です。
再投資の可否、仕方
分配金再投資は、金融機関によってはNISA口座から行うことができません。例えば、SBI証券や楽天証券のNISA口座では分配金再投資が可能なのに対して、三菱モルガン・スタンレー証券では分配金再投資を行うことができません。さらに、SMBC日興証券などのように、NISA口座にて保有している投資信託であっても、再投資についてのみ課税口座から行われるケースもあります。NISA口座を開設する前に、NISA口座での分配金再投資に金融機関対応しているかどうか、また再投資の方法も確認しておきましょう。
参考:NISA取引[三菱モルガン・スタンレー証券公式サイト]
参考:NISA口座における投資信託分配金再投資の買付け方法[楽天証券公式サイト]
参考:NISAご利用にあたってのご留意事項[SMBC日興証券公式サイト]
毎月分配型は再投資には向かない
毎月分配型とは、毎月定額の分配金を受け取ることのできるコースのことです。定期的に分配金を受け取れるメリットがありますが、分配金の支払い頻度が上がることで、注意が必要になります。
元本払戻金には元々税金がかかりません。(*1)そのため、元本を取り崩しての分配金支払いが毎月行われるようなファンドでは、NISAの最大のメリットである非課税の恩恵を受けにくくなってしまいます。さらにNISAでの再投資は非課税枠を使って行われるため、非課税枠を使い切ると課税口座から投資されることになります。長期的な分配金再投資をしたい投資家にとっては使いにくい仕組みです。また、利益がでた際にもすぐに定期的な分配金として利益が支払われてしまうため、再投資の複利効果(*2)が薄くなってしまいます。
再投資による複利効果と、NISAや積立NISAの長期的な資産形成の非課税メリットを活用するには、毎月分配型は適していないでしょう。
(*1:NISAや積立NISAに関わらず、課税されません。)
(*2:利息からさらに利息が生まれること。)
参考:「毎月分配型の投資信託」とは?[日本証券業協会公式サイト]
分配金の活用方法の詳細を理解し、投資の目的に応じて適切な方法を選んで運用しましょう
投資信託の分配金の種類とコースについて解説しました。再投資は投資家が現金を手にすることがなく自動的に行われる仕組みのため、便利な一方でNISA非課税枠を消費しすぎてしまう可能性があります。無分配型ファンドでは、無分配方針が明示されず、投資家間の暗黙の了解によって判断されるため、投資初心者にとっては難易度が高くなってしまいます。このように分配金は、活用方法によって投資家にとってメリットとなる場合と、反対に負担となってしまう場合が混在しています。非課税メリットのあるNISAと上手く併用することで効率的に運用を行うことも可能ですが、注意すべき点も少なくないので、分配型に関する知識を得たうえで自身の投資スタイルや運用目的・方針によって最適なコース選択を行っていくことが大切です。